その川嶋が海上自衛隊に入隊したのは、平成9年3月。
1等海佐に昇った時期が自衛隊の人事発令で確認ができないが、おそらく平成29年6月に外務省に出向し、NATO勤務となったタイミングで1佐に昇っていると思われる。
(画像提供:在ベルギー日本国大使館公式webサイト)
(画像提供:在ベルギー日本国大使館公式webサイト)
洋上でのキャリアを見ると、練習艦かしま水雷士、練習艦やまぎり航海長、試験艦あすか航海長、補給艦ましゅう船務長、護衛艦あさぎり船務長兼副長、練習艦せとゆき艦長と、その多くを練習艦の幹部として過ごしている。
なお試験艦あすかは一般に余り知名度がない艦だが、開発隊群隷下に在る試験専用の艦であり、各種兵装の洋上実験などを担当している。
ちなみに管理人(私)は以前、瀬戸内海で開催されたミニ観艦式において、当時はまだ護衛艦種だったせとゆきの艦上から洋上を進む試験艦あすかを見学したことがある。
角張ったフォルムが印象的な、護衛艦とはまた違う魅力ある艦だが、実は女性の登用という意味でも常に先駆的に時代をリードしてきた「試験艦」でもある。
その航海長に川嶋が着任しているというのも、そのキャリアを見る上で見逃せないポイントである。
一方、幕僚やスタッフのポジションでは、練習艦隊司令部の訓練幕僚補佐、海幕の調査部調査課情報班、練習艦隊司令部の通信幕僚兼情報幕僚、海幕の指揮通信情報部情報課情報保全室、海幕の防衛部防衛課防衛班など、情報系職種での活躍が印象的だ。
そして平成29年6月から外務省に出向に出向しNATO勤務を務め上げると、その後職として海幕の装備計画部装備需品課後方運用班長として活躍している。
非常に充実したキャリアを歩む、41期でもっとも注目を集める幹部の一人であると言ってよいだろう。
なおここで注目してほしいのは、川嶋が外務省に出向し、NATO勤務を経験していることだ。
NATOはご存知のように、ベルギーにその本部を設置している。
そしてベルギーにはEUの本部も置かれており、実は欧州のみならず、世界の安全保障の拠点として位置づけられてる要衝にあたる。
東はドイツ、西はフランスに接し、海を挟んだ北隣にはイギリスに面しているという地理的条件から、古くから欧州の強国に蹂躙・支配され続けた歴史を持つ国であり、1830年に独立を果たしてからは、世界の軍事・外交の中心として機能することになり、現在に至る。
そのため、ベルギー駐在の外交官の数は、実はニューヨークを抜いて世界一多いとも言われており、この地で軍事外交にあたることは制服組自衛官にとって最大の栄誉の一つとなっている。
川嶋はそのようなベルギーの地で、NATOのWPS(Woman, Peace and Security)オフィスに勤務し、文字通り世界の女性・平和・安全保障を肌感覚で体感しながら、またこれらの活動に貢献した。
これもまた、特筆すべきキャリアの一つと言えるだろう。
では最後に、いつもどおりその川嶋と同期である41期組の人事の動向について・・・
見ていきたいところではあるが、41期組は最初の陸将補が選抜されるのが2022年夏の将官人事の予定である。
そのため2020年5月現在、1選抜の幹部が1佐であり、本稿でご紹介するには人数が多いので割愛したい。
ちなみに第41期組と言えば、先にご紹介した第9特科連隊長の横田の他、初代となる奄美警備隊長に陸自屈指のイケメン・平田浩二(第41期)が上番している。
また国防の最前線・沖縄那覇の第15旅団隷下、第51普通科連隊長を務める谷口慎(第41期)など、同期にはイケてる幹部揃いだ。
まさに今、国防の最前線で指揮を執る世代であることが、おわかり頂けるのではないだろうか。
いずれにせよ、川嶋を始めとした41期組は、2020年代後半にかけて、我が国の国防を中心になって担う世代である。
その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:在ベルギー日本国大使館公式webサイト)
◆川嶋潤子(海上自衛隊) 主要経歴
平成
9年3月 海上自衛隊入隊(第41期相当)
10年9月 練習艦むらくも通信士
11年11月 海上自衛隊幹部候補生学校学生隊第1学生隊長付
12年12月 練習艦かしま水雷士
13年11月 練習艦隊司令部訓練幕僚補佐
14年11月 海上幕僚監部調査部調査課情報班
16年7月 練習艦やまぎり航海長
18年8月 試験艦あすか航海長
19年10月 練習艦隊司令部通信幕僚兼情報幕僚
20年10月 海上幕僚監部指揮通信情報部情報課情報保全室
23年3月 海上自衛隊幹部学校(指揮幕僚課程)
24年3月 補給艦ましゅう船務長
25年3月 護衛艦あさぎり船務長兼副長
27年3月 練習艦せとゆき艦長
28年2月 海上幕僚監部防衛部防衛課防衛班
28年7月 海上自衛隊幹部学校防衛戦略教育研究部戦略研究室
29年6月 外務省出向・NATO勤務
令和
元年8月 海上幕僚監部装備計画部装備需品課
元年9月 海上幕僚監部装備計画部装備需品課後方運用班長
もともと川嶋さんはピアノで大学へ行こうとした方だけあって、とても品のある女性です。
艦長時代も、手柄は上司と部下にというタイプです。何事も控えめにという山手撫子ですね。
川嶋さんといえば、やはり外務省出向時代の活躍が大勢の方に記憶に残るのではないですかね。
将来の将官候補ですね。
ですね!^^