髙岩俊弘(たかいわ・としひろ)|第36期・海上自衛隊

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髙岩が海上自衛隊に入隊したのは平成4年3月。

福岡では、進学校として知られる福岡大学付属大濠高校を卒業しての、防衛大学校進学だ。

なお大濠高校は、博多華丸・大吉の華丸の出身高校としても知られる。

とは言え、高岩が3年生の時の1年生なので、さすがに接点は全く無さそうだ。

(画像提供:海上自衛隊公式youtubeサイト クリックすると動画が始まるので注意!!

その高岩、歩んできたキャリアは、ある意味でもっとも海上自衛官らしい掃海部隊の幹部としてのものだ。

日本が戦争に破れた後、最初に組織力を回復した(させられた)部隊でもあり、そして朝鮮戦争で「敗戦国の将士」として連合国側から屈辱の指揮命令を受けることになった兵科でもある。

 

そのあたりは話が拡散するので別に譲りたいが、いずれにせよ戦後日本の復興は、我が国の周囲に設置された機雷の除去から始めなくては、全くシーレーンが機能しない惨状であった。

そのような中にあって、掃海部隊が我が国の戦後復興に果たし続けてきた役割は計り知れない。

 

そして多くの国民も同様に、掃海部隊にそんな思いを頂いているかもしれないが、しかし2018年現在の掃海部隊はちょっと様子が違う。

現在、掃海隊群は我が国の海上防衛の中心的役割を果たすことが想定されており、また具体的には、尖閣諸島に有事が発生した際には、最前線への投入が予定される部隊となっている。

「掃海艇部隊にそれほどの戦う能力があるわけがない」

とお思いになるかもしれないが、もちろん護衛艦などとともに、艦隊同士の撃ち合いに参加しようというのではない。

我が国の島しょ部が  中国人民解放軍に  敵性勢力に占領された際に、奪還作戦の主力を担う可能性があるとうことだ。

具体的にどういう事か。

そのメッセージは、平成28年7月に行われた掃海隊群の大規模な再編に見て取れる。

 

この再編が行われた際の大きな目玉は、第1輸送隊が護衛艦隊隷下から掃海隊群隷下に編成替えになったことだ。

ご存知の通り、第1輸送隊は、「おおさき」「しもきた」「くにさき」の大型輸送艦からなる海自の大規模輸送部隊である。

それぞれが、主力戦車も運搬可能なエアクッション艇LCACを搭載しており、一旦事が起これば第1輸送隊に洋上の司令部が設置される可能性が極めて高い。

そして、機動戦闘車や陸自の精鋭、それに陸海の特殊部隊などを満載して、私達の国土を奪還しに行くことになるだろう。

 

ではなぜ、掃海隊群の隷下にこのような殴り込み部隊が配置されたのか。

それは、いったん島しょ部が占領されれば、敵性勢力は直ちに機雷などを散布し、洋上封鎖を図る可能性が極めて高いからだ。

空軍(空自)を含む全面戦争には、恐らくその初期において、  日中両国とも  紛争当事国はその投入を見送り、極めて限定的な紛争に収めようと初期努力をするだろう。

というよりも、日本がそのように出る可能性が高いと想定し行動してくるだろう。

そのため占領側は、少数部隊を送り込み洋上を封鎖して時間を稼ぎ、占領を既成事実化しようとするはずだ。

それを阻止できるのは、海上航路を啓開する能力を持ち、敵に近接する事ができる掃海隊群だけとなる。

そのため、その隷下に殴り込み部隊を編成するのは極めて当然な措置であろう。

もちろんこの際には、護衛艦をはじめとした諸職種と陸空の各部隊が全力でサポートにあたることも、もちろん前提になる運用だ。

 

このように、2018年現在の安全保障環境においては、ある意味でもっとも危険な任務に携わる可能性が高いのが、掃海隊群である。

護衛艦よりも遥かに小さなFRP製の艦船で外洋の荒波を蹴って走る、本当に命知らずの精鋭たちの集団だ。

高岩は常に、そんな危険と隣り合わせの現場で指揮を取り続けてきた高級幹部である。

ぜひ、鹿児島で高岩を見かけることがあれば、そんな掃海艇部隊が果たしてきた役割について、興味を持って聞いてもらえれば幸いだ。

 

最後に、同期である36期の動向についてだ。

36期組は、2017年夏の将官人事で最初の海将補が選抜された年次にあたる。

そして、2018年5月現在で以下の幹部たちがその任にあたっている。

 

竹中信行(第36期相当)・舞鶴地方総監部幕僚長(2017年8月)

金刺基幸(第36期)・防衛大学校訓練部長(2018年3月)

※肩書はいずれも2018年5月現在。( )内は海将補昇任時期。

 

高岩については、掃海艇を率いる高級幹部としてさらに厳しい第一線での任務が、今後も続いていくことになるのではないだろうか。

その活躍と精強さこそが、我が国の領土を侵そうとする者に対する抑止力となり、平和と安全が守られる何よりの力になる。

 

高岩にはその最前線で戦ってきた過去があり、そしてこれからも戦い続けるだろう。

その活躍にはぜひ注目し、応援をしてもらえれば幸いだ。

 

(画像提供:鹿児島地方協力本部公式Webサイト

◆髙岩俊弘(海上自衛隊) 主要経歴

平成
4年3月 海上自衛隊入隊(第36期)
14年3月 掃海艇あわしま艇長
15年3月 掃海艇なおしま艇長
16年3月 大湊地方総監部防衛部
18年3月 掃海隊群幕僚
20年3月 海上幕僚監部装備体系課
22年3月 第43掃海隊司令
23年8月 呉地方総監部人事課長
25年7月 1等海佐
26年10月 阪神基地隊副長
27年7月 第51掃海隊司令
28年7月 大湊地方総監部管理部長
30年4月 鹿児島地方協力本部本部長

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