その北村が航空自衛隊に入隊したのは平成元年3月。
航空教育集団司令部付としてパイロットの訓練を受けると、その初任地は入間に所在する第402飛行隊であった。
同地でC-1輸送機のパイロットとして、我が国の空に実践デビューを果たしている。
(画像提供:航空自衛隊美保基地公式Webサイト)
その後も、一貫して輸送の現場で指揮を執り、飛行隊長職は同じ入間の、第2輸送航空隊第402飛行隊で経験。
中央では、空幕(航空幕僚監部)や統幕(統合幕僚監部)の運用系の部署で要職を重ね、また総務調整官を任されるなど、幅広い分野で手腕を発揮。
そして平成28年12月からは、第3輸送航空隊司令兼美保基地司令に着任して、輸送現場の指揮と教育者としての両面で活躍している。
なお北村は、この第3輸送航空隊司令に在職中に、我が国にとって次世代の主力輸送戦力なる国産輸送機・C-2輸送機の運用を任された。
この巨大な最近型輸送機はBlue Whale(ブルーホエール:青いクジラ)の愛称で知られ、2018年9月現在で美保基地にのみ配備されている期待の新鋭だ。
輸送力、航続距離、速度など、あらゆるスペックがC-1輸送機とは文字通り桁違いとなる。
この最新鋭機種は、もちろん陸自と連携の上でC-1と同様に、空挺降下など最前線での輸送任務にも投入することが想定されているが、おそらく現実的には、後方支援任務でこそ力を発揮することになるのではないだろうか。
陸自の部隊構想が次々と、戦力の集中と機動力の向上を目指し部隊の改編を続けていく中で、おそらくその南西方面への戦力の転地でこそ、機動力と輸送力を発揮して行くことになるだろう。
言い換えれば、新しい時代の陸自の戦力は、北村のような、輸送力を知り尽くした指揮官とともにあってこそ万全の力を発揮することができるということだ。
そう言った意味において、北村にかかる自衛隊内外の期待は非常に大きく、また担っている責任も極めて重い。
ぜひ、我が国の今後10年の安全保障環境を占う上で、注目して欲しい高級幹部の一人である。
では最後に、その北村と同期である33期組(相当)の、人事の動向について見てみたい。
33期組は、2020年に最初の空将が選抜される年次になっているため、同期の出世頭は空将補と言うことになる。
そして2018年9月現在で空将補の任にある幹部は、以下の通りだ。
南雲憲一郎(第33期)・航空幕僚監部防衛部長(2014年8月)
森田雄博(第33期)・西部航空方面隊副司令官(2014年8月)
安藤忠司(第33期)・航空戦術教導団司令(2015年3月)
今城弘治(第33期)・航空総隊司令部防衛部長(2015年12月)
影浦誠樹(第33期)・中部航空警戒管制団司令(2015年12月)
石上誠(第33期相当)・防衛装備庁調達事業部総括装備調達官(2016年12月)
増田友晴(第33期)・幹部候補生学校長(2017年8月)
※肩書はいずれも2018年9月現在。( )は空将補昇任時期。
以上のような状況になっており、まずは南雲と森田に加え、安藤、今城、影浦までの5名が、1選抜空将の有力候補と言うことになるだろうか。
北村については、これほどに充実したキャリアと実績を誇る幹部だ。
第3輸送航空隊司令というポストの重みを考えても、あるいは近い将来に将官に昇り、輸送系のさらに重い責任を担い、活躍してくことは間違いないと思われる。
陸海空自衛隊の統合運用を考える上でも、非常に注目される幹部である。
その動向には特に注目し、そして応援をしていきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:首相官邸公式Webサイト メールマガジンより)
◆北村靖二(航空自衛隊) 主要経歴
平成
元年3月 航空自衛隊入隊(第33期相当)
2年2月 航空教育集団司令部付(浜松)
4年4月 第402飛行隊(入間)
8年3月 幹部候補生学校(奈良)
10年3月 第402飛行隊(入間)
12年1月 3等空佐
12年4月 第2輸送航空隊防衛部運用班長(入間)
13年6月 第1輸送航空隊第401飛行隊(小牧)
14年10月 第1輸送航空隊付(米空軍第463航空輸送群第50飛行隊・アーカンソー州)
15年7月 2等空佐
17年5月 航空幕僚監部防衛部運用課輸送室(市ヶ谷)
18年3月 航空幕僚監部運用支援情報部運用支援課輸送室(市ヶ谷)
19年4月 第2輸送航空隊第402飛行隊長(入間)
20年7月 航空支援集団司令部防衛部付(府中) 1等空佐
20年8月 第16期イラク復興支援派遣輸送航空隊司令
21年4月 幹部学校付
22年4月 統合幕僚監部運用第1課総括班長
24年4月 航空幕僚監部総務調整官
25年4月 航空支援集団防衛課長
26年12月 幹部候補生学校教育部長
28年8月 幹部学校計画課
28年12月 第3輸送航空隊司令兼美保基地司令
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