(2/2ページ)
その伊藤が海上自衛隊に入隊したのは昭和63年3月。
1等海佐に昇ったのが平成19年1月、海将補に昇ったのが25年8月なので、ともに32期1選抜(1番乗り)となるスピード出世であった。
ただでさえ、将官に昇る幹部の数が少ない海上自衛隊である。
文字通り、32期同期で1、2を争う極めて優秀な自衛官であることは間違いのない、超のつくエリートだ。
(画像提供:防衛省防衛白書2004公式Webサイト)
(画像提供:海上自衛隊公式Webサイト 活動紹介ページ)
その伊藤だが、国家の安全保障の根幹に関わる現職を任されているのは先述のとおりだ。
そして、このような重い責任を担うことになったのは、これが初めてではない。
時は平成15年(2003年)3月のことであり、2等海佐であった伊藤は、米中央軍の連絡官として半年間、米国フロリダ州タンパに赴いている。
時はまさにイラク戦争開戦の時である。
米中央軍はイラク戦争を指揮する部隊であり、同地に調整官として赴くことは、同盟国として米国の動向や真意を探り出し、我が国の政策や意思決定に寄与する情報を本国に送らなければならない重要な責任を担う。
いわば、伊藤が正確な情報を得て本国に送ることが出来るかどうか。
それが我が国の国益に重大な影響を与えるほどのポジションであったと言っていいだろう。
まだ38歳で2等海佐時代の伊藤であったが、この極めて重要な任務をこなし、ある意味において、自衛隊内外の評価が確実に定まった時期であったと言って良いかも知れない。
以降は護衛隊司令、護衛隊群司令など、現場指揮官としても極めて優れた指揮能力を発揮。
中央(海上幕僚監部、統合幕僚監部)では、海幕では人事系の要職を。
統幕では、こちらもまたエリートの指定席である防衛計画部長にも着任するなど、これ以上はない重い責任を担い続けてきた海上自衛官人生であった。
そしてその後職として、我が国の命運を直接担うことになる、国家安全保障局担当の内閣審議官として辣腕を振るう。
近い将来の海上幕僚長であることは確実の、非常に注目が集まる海上自衛官の一人である。
では最後に、その伊藤と同期である32期組の人事の動向についてみてみたい。
32期組は、2013年夏の将官人事で最初の海将補が選抜され、2019年夏の将官人事で最初の海将が選抜される予定の年次にあたる。
そのため2018年10月現在での最高位は海将補ということになるが、その任にあるものは以下の幹部たちだ。
二川達也(32期)・横須賀地方総監部幕僚長(2013年8月)
伊藤弘(第32期)・内閣審議官(国家安全保障局担当)(2013年8月)
白根勉(第32期)・ 掃海隊群司令(2014年12月)
小座間善隆(第32期相当)・潜水艦隊司令部幕僚長(2015年3月)
柴田弘(第32期相当)・海上幕僚監部装備計画部長(2015年8月)
梶元大介(第32期)・第3護衛隊群司令(2016年12月)
中村敏弘(第32期)・第5航空群司令(2017年8月)
石田伸介(第32期)・防衛装備庁調達事業部総括装備調達官(2017年12月)
瀨戸慶一(第32期相当)・第2航空群司令(2018年3月)
※肩書はいずれも2018年10月現在。( )内の数字は将補昇任時期。
※2018年夏の将官人事で昇任した海将補について、期別整理未了のため、追記する可能性あり。
以上のような状況になっており、まずは二川、伊藤、白根の3名が抜けているというところだろうか。
いずれ劣らぬ凄いキャリアの幹部ばかりであり、その活躍がとても楽しみなところだ。
伊藤については、その経歴から考えて、2019年夏の将官人事で1選抜で海将に昇任し、更に重い責任を担っていく事になるのではないだろうか。
そしていずれ、自衛艦隊司令官や佐世保・横須賀の地方総監にも昇り、状況によってはその次のイスもあり得るほどの期待の幹部である。
その動向は非常に注目であり、目を離せそうにない。
今後ともその活躍を追い続け、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:海上自衛隊公式Webサイト 活動紹介ページ)
◆伊藤弘(海上自衛隊) 主要経歴
昭和
63年3月 海上自衛隊入隊(第32期)
平成
11年1月 3等海佐
14年7月 2等海佐
15年3月 米国中央軍連絡官
17年4月 いそゆき艦長
18年3月 海上幕僚監部人事教育部補任課
19年1月 1等海佐
21年8月 統合幕僚監部防衛課防衛交流班長
22年7月 第7護衛隊司令
23年12月 海上幕僚監部人事教育部補任課長
25年8月 防衛大学校訓練部長 海将補
26年12月 第4護衛隊群司令
27年5月 第151連合任務部隊指揮官
27年8月 第4護衛隊群司令
28年7月 統合幕僚監部防衛部副部長
29年8月 統合幕僚監部防衛計画部長
29年8月 内閣官房出向 内閣審議官(国家安全保障局担当)
コメントを残す