山村浩(海上幕僚副長・海将)|第28期・海上自衛隊

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その候補者たる山村が、海上自衛隊に入隊したのは昭和59年3月。

1等海佐に昇ったのが平成15年1月、海将補に昇ったのが21年7月、海将に昇ったのが27年8月だったので、その全てが28期組1選抜の前期(1番乗り)となるスピード出世だ。

ただでさえ、ポストの少ない海自の最高幹部ポストに、全ての階級で人事の規定上最速で昇りつめたということになる。


(画像提供:海上自衛隊公式Webサイト 活動状況紹介)

現場にあっては、みねゆき艦長、第4護衛隊群司令などの要職を歴任し、平成27年8月には、我が国の海上戦力の中核を担う、護衛艦隊司令官に着任。

中央(統合幕僚監部、海上幕僚監部)では、防衛課編成班長、人事計画課企画班長、防衛課長、総務部副部長を務めた後に、統合幕僚監部の防衛計画部長に着任している。

そして28年12月から海上幕僚副長の重責を担っている、絵に描いたようなエリートコースを駆け上がってきた最高幹部だ。

その後職として海上幕僚長に昇っても、全くサプライズではない客観状況と言えるだろう。

 

では次に、他の海上幕僚長候補者の動向についてだ。

先述のように、一義的には海幕長候補と言えるポストは自衛艦隊司令官、佐世保・横須賀の総監、それに海上幕僚副長ということになるが、その顔ぶれは2018年12月2日現在で以下の通りとなっている。

 

自衛艦隊司令官 山下万喜(第27期)

着任年月日:2016年12月

 

佐世保地方総監 菊地聡(第28期)

着任年月日:2017年12月

 

横須賀地方総監 渡邊剛次郎(第29期)

着任年月日:2018年3月

 

ここでもう一つ、過去の海幕長人事に関する統計的な数字をご紹介したい。

第2代海幕長である長澤浩(海兵49期)から第33代海幕長である村川豊までの、「海幕長直前ポスト」の在任平均日数は517日(1年5ヶ月余り)となっている。

最長が第9代海幕長の石田捨雄(海兵64期)で、海幕副長を989日、すなわち2年8ヶ月以上務めた上で、海幕長に昇っている。

逆に最短は、第12代海上幕僚長であった大賀良平(海兵71期)で、274日間、すなわち9ヶ月余りを大湊地方総監で過ごした後に海幕長に昇っている。

直近の10人ほどで海幕長に着任したものを見ても、最長が895日、最短が312日、平均544日(1年6ヶ月弱)であり、傾向はほとんど変わらない。

つまり「海幕長直前ポスト」は、よほど特別な事情があった場合には、最短で9~10ヶ月。

平均的には1年半程度で海幕長に昇ることが多いということである。

 

これら数字と、第29期という年次のことを考えても、横須賀地方総監の渡邉が、次の海幕長に着任することはまず考えられない。

渡邉は、次の次の海幕長有力候補と考えておそらく間違いがないところだ。

同様に、佐世保地方総監に着任して1年の菊地が、今すぐ海幕長に昇る可能性も低いだろう。

となれば、残るのは大本命である山下か、対抗馬の山村か、ということになりそうだ。

しかし、28期組の山村が海幕長に着任すると、原則として27期、28期の将官は程なくして勇退となってしまうのが、人事の慣例だ。

さすがにそれでは組織の若返りが急進すぎて、いろいろと面倒なことになるだろう。

であれば、やはり下馬評通り第34代海上幕僚長には山下が着任する、というのが常識的な予想となる。

様々な専門誌などで、山下の海幕長着任を疑問視する意見もあるが、おそらく間違いがないのではないだろうか。

 

一方でその場合の、山村のポストについて。

これは恐らく、山下のあとの自衛艦隊司令官に着任することになるだろう。

同期のバランスをとるために菊地は佐世保総監のままであり続け、次の次の海幕長候補として渡邉も現職にあり、山村にポストを譲ることは想定できないのが常識的な予想といったところだろう。

 

そしてもし、これ以外の人事の可能性があるとしても、おそらく27期から海上幕僚長が出ることは間違いがないのではないだろうか。

つまり、一部専門誌などで見られる論調のように山下が海幕長に昇らなかったとしても、27期から海幕長が選ばれることにだろうということだ。

そしてもし山下がまさかの勇退となった場合には、もはや候補者は一人しかいない。

人事の慣例から言えば史上初となるが、こちらの海将だ。

 

呉地方総監 池太郎(第27期)

着任年月日:2016年7月

 

繰り返しになるが、呉地方総監から直接、海上幕僚長に昇った人事は過去に例がない。

呉地方総監経験者から昇った例は3例あるが、いずれも後職で自衛艦隊司令官に着任した上での、海幕長への昇任である。

そういった意味では、池が第34代海上幕僚長に昇る可能性は決して高いとは言えないが、一方で山下が本当に勇退となるのであれば、池以外の着任は無いのではないだろうか。

結論として、本命が山下、対抗が池ということで、予想をおいておきたい。

 

山村についてはおそらく、自衛艦隊司令官に着任し、その次の海幕長有力候補として、さらに活躍の場を広げることになるのではないだろうか。

いずれにせよ、山村が我が国の平和と安全を担う、その最も重い責任を担い続けることだけは間違いがないところだ。

間もなく発表されるであろう冬の将官人事と山村の活躍について。

その発表を楽しみに待ちがなら、そして今後とも変わらず応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。


(画像提供:防衛省統合幕僚監部公式Webサイト

◆山村浩(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
59年3月 海上自衛隊入隊(第28期)

平成
7年1月 3等海佐
10年7月 2等海佐
11年8月 あさぎり船務長兼副長
12年8月 みねゆき艦長
13年8月 海上幕僚監部防衛課編成班長
15年1月 1等海佐
16年8月 海上幕僚監部人事計画課人事計画調整官兼企画班長
19年7月 海上幕僚監部防衛課長
21年7月 海将補
21年12月 第4護衛隊群司令
23年4月 海上幕僚監部総務部副部長
24年3月 護衛艦隊幕僚長
25年8月 統合幕僚監部防衛計画部長
27年8月 護衛艦隊司令官 海将
28年12月 海上幕僚副長

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