柿原国治(かきはら・くにはる)|第32期・航空自衛隊

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柿原国治は昭和39年12月生まれ、福岡県出身の航空自衛官。

防衛大学校第32期、幹候は78期の卒業だ。

 

平成28年7月(2016年7月) 第41代北部航空警戒管制団司令・空将補

前職は航空自衛隊幹部学校副校長であった。

 

2018年3月現在、北部航空警戒管制団司令を務める柿原だ。

初級幹部の時代には高射部隊でのキャリアが目立つが、以降は中央での要職が目立つ空将補である。

自然、やはり現場指揮官としてよりも中央での仕事に目に行くが、あえて一つ印象的な仕事をあげるとすれば、3等空佐時代の外務省出向(国際情報局分析課)と、それに続く公益財団法人世界平和研究所に出向していた頃の実績だろうか。

 

この頃の柿原は盛んに論文を執筆・出版しており、また講演活動を行い、航空自衛隊としての考え方、我が国防衛政策のあり方について積極的に情報発信を行っている。

 

その論旨は大きく2つ。

・対中国政策の中長期的確立

・アメリカの衰退と我が国の国防政策の在り方

といったところだ。

 

これらの発言は、中国であれば威勢のいい現役少将クラスが軍服姿のまま、テレビの前で勢い盛んに演説を打っているようなものだが、日本の場合、いったん自衛隊外に席を置かないと、まして公益財団に出向しないと言えないというのが我が国の現状ということなのだろう。

 

なお柿原の論旨について、対中国については

「対中配慮を優先した我が国の対中政策が、不健全な日中関係を生み出している」

と、出向中でなければどこかの政党が顔を真赤にして怒り出しそうな本質を突いており、

「経済や軍事など、あらゆる分野において、我が国は適切なカウンターバランスを維持しなければならない」

という、至極まっとうな論旨を説く。

 

また中国には領土や領海という概念がなく、自国の国力が増大し、影響力が大きくなれば当然、国境付近から領土や領海を拡大していくものであると分析している下りは、説得力がある一方で、寒気すら感じる。

自国より国力に劣るものには極めて高圧的に対応する価値観を持っている国であることから、適切に接する必要があると説明する下りは、夢見がちなお隣の国にそのまま教えてあげたいくらいのものだが、教えたところで行動は変わらないのであろう。

 

 

その一方で、アメリカについては、尖閣諸島などの有事が発生した場合、アメリカはコミットせず、後方支援に限られるであろうという予測をし、防衛力を強化する必要性を説く。

これも極めて正論ではあるが、今の時代、幹部自衛官の多くが持っているであろうこの真摯な本音の提言を理解し、政策として実行することに政治生命をかけようとする政治家がどれほどいるのであろうか。

 

マスコミの劣化は極めて深刻であり、国家を語り国益を解くようなジャーナリストなど皆無で、いずれも極めて低劣で下品な話題で視聴率を稼ぎ、或いは特定スポンサーに配慮した紙面づくりを行うばかりだ。

このような時代にあって、柿原のような自衛官の声は国民には届きにくいかもしれないが、それでも必ず届いている。

諦めること無く、粘り強く、そしてつまらない揚げ足を取られないよう慎重に、今後も立場で許される範囲で、情報発信を続けるであろう柿原を応援したい。

 

さて次に、その柿原と、同期である32期の状況についてだ。

柿原が陸上自衛隊に入隊したのは昭和63年3月。

1等空佐に昇ったのが平成19年1月なので、32期1選抜(1番乗り)のスピード出世だ。

空将補に昇ったのは平成26年3月なので、こちらは同期1選抜からおよそ半年の遅れということになるが、そもそも航空自衛隊では将官に昇る者の数が非常に少ない。

そのため1選抜の半年遅れであれば言うまでもなくスピード出世であり、超が付くエリートということになる。

 

そして2018年3月現在で、32期組の空将補にある幹部は以下の通り。

32期組は2019年夏の将官人事で最初の空将が選抜される事になっている世代なので、32期組のエリート名簿ということになる。

 

鈴木康彦(第32期)・航空幕僚監部人事教育部長(2013年8月)

阿部睦晴(第32期)・航空幕僚監部装備計画部長(2013年8月)

柿原国治(第32期)・北部航空警戒管制団司令(2014年3月)

尾崎義典(第32期)・統合幕僚監部総務部長(2014年8月)

川波清明(第32期)・航空幕僚監部運用支援・情報部長(2015年8月)

上境賢己(第32期)・第1術科学校(2015年12月)

岩城公隆(第32期)・第4補給処長(2016年12月)

※肩書きは全て2018年3月現在。( )は空将補昇任時期。

 

以上のようになっており、まずは鈴木と阿部が1選抜で抜け出して、それを柿原が追い、尾崎が続くという状況だ。

将補の在任期間を考えると、2019年夏の将官人事で最初の空将に昇るのは、この4名のうちの誰かということになるだろう。

 

的確に国際情勢を分析し、我が国が採るべき安全保障政策について提言を続ける、空自を代表する論客の一人と言っても良い柿原だ。

その活躍には要注目であり、今後ともしっかりと応援していきたい。

 

本記事は当初2017年7月27日に公開していたが、加筆修正が重なったので2018年3月5日に整理し、改めて公開した。

 

◆柿原国治(航空自衛隊) 主要経歴

昭和
63年3月 航空自衛隊入隊(第32期)
63年9月 第3高射群

平成
3年3月 第1高射群付
6年3月 第1高射群
8年8月 補給本部
10年3月 幹部学校付
11年3月 内部部局防衛局兼ねて外務省出向(国際情報局分析課) 3等空佐
13年3月 内部部局防衛局兼ねて調査課付(公益財団法人世界平和研究所出向)
15年3月 航空幕僚監部防衛部防衛課 2等空佐
16年12月 第6高射群第21高射隊長
18年4月 航空幕僚監部防衛部防衛課
19年1月 1等空佐
19年4月 幹部学校付
20年7月 航空幕僚監部防衛部防衛課
21年1月 航空幕僚監部防衛部編成班長
22年1月 第8航空団基地業務群司令
23年8月 統合幕僚監部運用調整官
24年7月 航空幕僚監部人事計画課長
26年3月 航空自衛隊幹部学校副校長 空将補
28年7月 北部航空警戒管制団司令

 

【注記】

このページに使用している画像の一部及び主要経歴は、防衛省のルールに従い、防衛省のHPから引用。

主要経歴については、将補以上の階級のものにあっては防衛年鑑あるいは自衛隊年鑑も参照。

自衛官各位の敬称略。

※画像はそれぞれ、軽量化やサイズ調整などを目的に加工して用いているものがある。

【引用元】

防衛省航空自衛隊 当別分屯基地公式Webサイト(視察写真)

http://www.mod.go.jp/asdf/tobetsu/second/third/29katudo.html

防衛省航空自衛隊 北部警戒管制団公式Webサイト(プロフィール画像、活動記録)

http://www.mod.go.jp/asdf/nacw/topics/29/index29.html

http://www.mod.go.jp/asdf/nacw/nacw/commander.html

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