その遠藤が陸上自衛隊に入隊したのは平成3年3月。
1等陸佐に昇ったのが22年1月、陸将補に昇ったのが28年7月であったので、ともに35期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世であった。
(画像提供:陸上自衛隊第25普通科連隊公式Webサイト)
1佐以降の経歴だけでみると、中央(陸上幕僚監部)での補職が多くなっており、運用支援・情報部運用支援課のスタッフであった時に1等陸佐に昇任。
班長ポストは装備計画部装備計画課の企画班長で、課長ポストは装備計画部の装備計画課長としてそれぞれ経験した。
また職種部隊では、遠軽に所在する第25普通科連隊長に上番し、極寒の気候の中で精鋭部隊の先頭に立ち、厳しい任務を指揮している。
そして平成28年7月に陸将補に昇任すると、東部方面総監部の幕僚副長に着任。
その後職として第3施設団長兼ねて南恵庭駐屯地司令を任され、辣腕を振るっている。
35期1選抜で昇任を続ける、近い将来の陸上幕僚長候補の一人と言ってよいだろう。
なお、その遠藤が上番していた遠軽駐屯地の、第25普通科連隊についてだ。
遠軽は、その厳しい冬の気候などもあり、幹部候補生たちが原隊(初任地)として配属されることを尻込みすることで知られる。
2018年3月に、第1師団長のポストを最後に退役をされた西浩德(第28期)・元陸将も、その原隊は遠軽だが、非常に過酷な初級幹部時代を振り返りつつも、
「あの厳しい時代が、後の私を作ってくれた」
と述懐するなど、思い出深い任地として名前を上げている。
「風雪磨人」の標語で知られ、とりわけ真冬の過酷さは全国随一の駐屯地だが、しかしその分、地元との関係は非常に良好で、自衛官としての原点を築くにはとても素晴らしい部隊であったようだ。
きっと遠藤にとっても、思い出深い連隊長ポストになったのではないだろうか。
また、上記1佐以降のキャリアには記載していないが、遠藤は、3等陸佐であった2004年から半年間、UNDOF(国連兵力引き離し監視軍)の第17次派遣輸送隊長としてゴラン高原に赴任した経験を持つ。
UNDOFはシリアとイスラエルの停戦を監視し、その両軍を引き離して平和を回復・維持させる国連PKO活動の一環だ。
我が国からは、現地で要人警護などにあたるUNDOF司令部要員と、UNDOFの活動に必要な物資の補給や道路の整備・復旧などを行う派遣輸送隊の2つの任務に自衛隊員を派遣したが、遠藤はこのうち、派遣輸送隊の隊長を務めた。
ゴラン高原への自衛隊派遣は2013年、現地の治安情勢悪化によりその任務が打ち切られ自衛隊も撤退したが、逆に言えばそれほど危険な情勢の中で任務を遂行していたということだ。
脆弱な装備のみを携行し、また政治の怠慢でまともな法整備も行われていない中での派遣であったが、遠藤はこの任務にあっても、隊長としてしっかりと成果を出したことを、書き加えておきたい。
では最後に、その遠藤と同期である35期組の人事の動向について見ておきたい。
35期組は、2016年夏の将官人事で最初の陸将補が選抜された年次にあたる。
そして2019年4月現在、その任に在る最高幹部たちは以下の通りだ。
井土川一友(第35期)・北部方面総監部幕僚副長(2016年7月)
上田和幹(第35期)・需品学校長兼ねて松戸駐屯地司令(2016年7月)
遠藤充(第35期)・第3施設団長(2016年7月)
戒田重雄(第35期)・第1空挺団長兼ねて習志野駐屯地司令(2016年7月)
坂本雄一(第35期)・中部方面総監部幕僚副長(2017年3月)
武田敏裕(第35期)・富士学校機甲科部長(2017年8月)
青木誠(第35期)・陸上幕僚監部監察官(2017年8月)
※肩書は全て2019年4月現在。( )は陸将補昇任時期。
※2018年夏以降の将官人事で昇任した将補について、年次未確認のために追記する可能性あり。
以上のようになっており、まずは井土川、上田、遠藤、戒田の4名が、35期組の陸上幕僚長候補として1歩抜け出した状態にあると言って良さそうだ。
遠藤についても、2020年代半ばにかけて、我が国の平和と安全を担う中心的存在になっていく陸自の最高幹部である。
その動向は、我が国の安全保障そのものであり、ますます重い責任を背負っていくことになるだろう。
その活躍にはこれからも注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊第25普通科連隊公式Webサイト)
◆遠藤充(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
3年3月 陸上自衛隊入隊(第35期)
14年1月 3等陸佐
17年7月 2等陸佐
22年1月 陸上幕僚監部運用支援課 1等陸佐
22年3月 幹部学校付
23年4月 陸上幕僚監部装備計画課企画班長
25年4月 第25普通科連隊長
26年8月 陸上幕僚監部装備計画課長
28年7月 東部方面総監部幕僚副長 陸将補
29年12月 第3施設団長兼ねて南恵庭駐屯地司令
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