その瀨戸が海上自衛隊に入隊したのは昭和63年3月。
1等海佐に昇ったのが平成19年1月だったので、1選抜前期(1番乗り)昇任となるスピード出世だ。
その後、各地の航空隊において11年現場指揮を執り、充実した現場経験を積んだ上で30年3月、海将補に昇任した。
(画像提供:海上自衛隊八戸航空基地公式Webサイト)
そのキャリアはいずれも特筆するものばかりだが、特に印象的なのはやはり、19年6月から務めた在トルコ防衛駐在官の任務だろうか。
トルコと言えば、和歌山県・紀伊大島で1890年に発生したエルトゥールル号遭難事件を切っ掛けとした日本との軍事交流は、すでに130年近くに及ぶ。
その所在地は地中海の東、アラビア半島の北部に位置し、西洋と東洋の回廊として機能したことから、非常に幻想的な文化が栄えた国だ。
その一方で、西洋と東洋の間に位置するということは、宗教的・文化的な接点に所在すると言うことであり、その歴史は必ずしも平和に彩られたものではなく、今現在もテロなどの危険が日常的につきまとう。
実際に、2016年にはクウェートに所在していたトルコの防衛駐在官が、トルコ国内でのクーデターを画策した罪により、逮捕されるという事件まで発生している。
シリアやイラクとの国境地帯では常に爆弾テロの危険に直面しており、「世界の今」を知るには、嫌でも肌感覚で理解できる、厳しい国だ。
そんな国で、防衛駐在官としての任務を任された瀨戸には、理想を持ちながらも世界の現実を見据える、バランスの取れた知見が備わっているのではないだろうか。
海上自衛隊の最高幹部に必要とされる、非常に大きな素養の一つだ。
最後に、その瀨戸と同期である32期の人事の動向についてみてみたい。
32期組から最初の海将補が選抜されたのは2013年夏の将官人事。
最初の海将が選抜されるのは2019年夏の予定になっおり、2019年5月現在では、以下の幹部たちが海将補の任にあたっている。
二川達也(32期)・自衛艦隊司令部幕僚長(2013年8月)
伊藤弘(第32期)・内閣審議官(国家安全保障局担当)(2013年8月)
白根勉(第32期)・ 掃海隊群司令(2014年12月)
小座間善隆(第32期相当)・潜水艦隊司令部幕僚長(2015年3月)
柴田弘(第32期相当)・海上幕僚監部人事教育部長(2015年8月)
梶元大介(第32期)・練習艦隊司令官(2016年12月)
中村敏弘(第32期)・第5航空群司令(2017年8月)
石田伸介(第32期)・海上自衛隊第3術科学校(2017年12月)
瀨戸慶一(第32期相当)・第2航空群司令(2018年3月)
※肩書はいずれも2019年5月現在。( )内の数字は将補昇任時期。
瀨戸については、これだけの経歴を誇る32期を代表する航空畑の幹部の一人だ。
後職では、中央での部長職や地方隊での幕僚長ポストなど、より重要な責任を担っていくことになるのは確実であると思われる。
いずれにせよ、32期は2020年代前半に掛けて、我が国の国防を担う中心になっていく世代となる。
その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:海上自衛隊八戸航空基地公式Webサイト)
◆瀨戸慶一(海上自衛隊) 主要経歴
昭和
63年3月 海上自衛隊入隊(第32期相当)
平成
11年1月 3等海佐
14年7月 2等海佐
16年3月 第4航空隊
16年8月 第4航空隊飛行隊長
19年1月 1等海佐
19年6月 在トルコ防衛駐在官
22年9月 海上幕僚監部運用支援課
22年12月 海上幕僚監部運用支援課企画班長
24年4月 第2航空隊司令
25年8月 第4航空群司令部
25年12月 第4航空群主席幕僚
27年8月 航空プログラム開発隊司令
28年12月 呉地方総監部管理部長
30年3月 第2航空群司令 海将補
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