その佐藤が海上自衛隊に入隊したのは昭和60年3月。
1等海佐に昇ったのが平成16年1月なので、29期1選抜(1番乗り)のスピード出世だ。
1等海佐では、第2潜水隊司令や第2潜水隊群司令などのポストで現場指揮を重ねる一方、中央では人事系の要職を歴任し、10年に渡り現場の指揮を執り続け、26年8月に海将補に昇任した。
十分な実績を重ねた上での、非常に頼もしい堂々の将官昇任であった。
(画像提供:海上自衛隊佐世保地方隊公式Webサイト 29年度の出来事より)
なお、その将官昇任後の最初のポストは大湊地方総監部の幕僚長。
さらに潜水艦隊司令部の幕僚長を経て、佐世保地方総監部の幕僚長に着任した流れだ。
そのため、将官昇任後は指揮官ポストを経験していないということになるが、自衛隊には、小さくとも組織のトップが重んじられ、また幹部本人からも好まれる文化がある。
その意味では、極めて重い責任のポストが続くとは言え、佐藤本人にも、いつか将官旗を掲げたいという想いが心のどこかにあるかもしれない。
最後にその、佐藤を含む29期の人事の動向について見てみたい。
29期組は、2016年に最初の海将が選抜され、同期の海幕長候補も出揃っていると言っても良い状況にある。
そして2018年7月現在では、以下の幹部たちが海将の任にあたっている。
渡邊剛次郎(第29期)・横須賀地方総監(2016年7月)
糟井裕之(第29期)・護衛艦隊司令官(2016年12月)
杉本孝幸(第29期)・航空集団司令官(2017年8月)
大島孝二(第29期)・海上自衛隊補給本部長(2017年12月)
中尾剛久(第29期)・舞鶴地方総監(2017年12月)
※肩書はいずれも2018年7月現在。( )は海将昇任時期。
以上のような状況になっており、渡邊などはその後職で、海上幕僚長に昇ってもおかしくない横須賀地方総監を務めるなど、今まさにもっとも重い責任を背負っている世代にあたるのが29期だ。
佐藤については、素直に考えれば佐世保の幕僚長を務めたほどの男である。
後職では海将に昇り、潜水艦隊司令官に就いてもおかしくない堂々の将官であるが、あとは29期という年齢と、その他の幹部の異動との兼ね合いと言ったところだろうか。
間もなく異動が予想される2018年夏の将官人事。
あるいはここで動きがない場合、現職を最後に勇退となる可能性もあるが、もしくはこの夏に海将に昇る可能性も十分に考えられるだろう。
そう言った意味でも、注目の将官人事になりそうだが、その結果によって佐藤のこれまでの充実したキャリアや我が国の平和と安全に対する貢献が、いささかも変わるものではない。
楽しみにしながらも、冷静に、夏の将官人事に注目したい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略
(画像提供:海上自衛隊佐世保地方隊公式Webサイト 29年度の出来事より)
◆佐藤賢上(海上自衛隊) 主要経歴
昭和
60年3月 海上自衛隊入隊(第29期)
平成
8年1月 3等海佐
11年7月 2等海佐
12年3月 なつしお副長兼航海長
13年3月 潜水艦教育訓練隊
13年7月 はましお艦長
15年3月 海上幕僚監部補任課
16年1月 1等海佐
18年8月 海上幕僚監部補任課補任班長
19年8月 第2潜水隊司令
20年4月 海上幕僚監部防衛課防衛調整官
21年7月 海上幕僚監部人事計画課長
23年4月 海上幕僚監部総務課長
24年8月 潜水艦隊司令部
24年12月 第2潜水隊群司令
26年8月 大湊地方総監部幕僚長 海将補
27年8月 潜水艦隊司令部幕僚長
29年8月 佐世保地方総監部幕僚長
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