井上亙(いのうえ・わたる)は昭和46年8月3日生まれ、福岡県出身の陸上自衛官。
防衛大学校第38期の卒業で幹候75期、職種は野戦特科だ。
平成30年3月(2018年3月) 初代となる西部方面特科連隊長・1等陸佐
前職は陸上幕僚幹部防衛部情報通信研究課であった。
(画像提供:2枚共に陸上自衛隊第8師団公式Webサイト)
2018年3月の陸自大改革を受け誕生した、西部方面特科連隊を率いる初代連隊長の井上だ。
ややこしいので最初にご説明しておくと、西部方面には、方面隊の名前を冠した2つの特科部隊がある。
一つが井上が率いる特科連隊であり、もう1つが、2018年7月現在で壁村正照(第30期)が率いる、西部方面特科隊だ。
名前の印象からすれば、特科連隊が上位で特科隊が下位のように思えるが、方面隊が直轄するのが特科隊であり、平時は方面隊隷下、第8師団の指揮下に在るのが特科連隊となる(有事の際は共に方面隊直轄運用)。
色々とややこしいにも関わらず、今のところこの両者を一つにするための予算は計上されていない。
つまり当面のところは、この2つの特科部隊が西部方面隊隷下で共存していくことになる見込みということだ。
なお役割だが、井上の率いる特科連隊は2018年7月現在で、FH-70を主力とする野戦特科らしい大火力で戦場を制圧する部隊となっている。
さらに、12式地対艦ミサイルを運用し、南西方面の離島と第1列島線を防衛するための301地対艦ミサイル中隊の新編が予算要求されていることから、これら戦力も近い内に隷下に加わることになりそうだ。
一方で特科隊の方は、MLRSと12式地対艦ミサイルを運用し、海上の敵目標を撃破することを目的とする部隊になっている。
いわば、野戦特科の大きく分けた2つの機能が、それぞれの部隊に分かれているのが2018年7月の現状ということだ。
(画像提供:陸上自衛隊第8師団公式Webサイト ※切り抜き加工)
興味深いのは、FH-70を主力とする特科連隊を率いる井上が地対艦ミサイルのエキスパートであり、12式地対艦ミサイルを主力とする特科隊を率いる壁村が野砲のエキスパートであることだろうか。
もっとも壁村は、野戦特科の幹部ではあるが情報幹部としての役割も目立つのでどちらが本職とは言い難い部分もあるが、それにしてもこの補職は普通に考えれば逆にも思われる。
ただ、先述のように西部方面特科連隊には近々、地対艦ミサイル中隊が新編され、総合的な野戦特科部隊になることが確実であること。
さらに上記画像を見て頂ければ明らかだが、西部方面特科連隊のエンブレムには、北熊本、えびの、久留米、湯布院の4つの駐屯地が打ち込まれている。
その一方で、2018年7月現在で、予算要求のレベルでも、西部方面特科連隊には湯布院に部隊を新設する予定はない。
つまりこれは、近い将来において湯布院(西部方面特科隊)を、西部方面特科連隊が吸収する予定であることを企図したエンブレムなのではないだろうか。
自然な推測ではそういう事になりそうだが、ただ単に新設予定の301地対艦ミサイル中隊を湯布院におき、第5地対艦ミサイル連隊と連携するということだけかも知れない。
いずれにせよ、西部方面の特科部隊はもうひと改編あるのではないかと推測しており、今後の動向と、その中で井上が果たすであろう役割には、注目する必要がありそうだ。
ではこの国防の最前線で、機動師団の中核たる西部方面特科連隊を預けられた井上とはどのような幹部なのか。
少しそのキャリアを詳しく見ていきたい。
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