その下が海上自衛隊に入隊したのは昭和62年3月。
1等海佐に昇ったのが平成18年7月だったので、第31期組1選抜後期(1番手グループ)となるスピード出世だ。
海将補に昇ったのが27年12月だったので、9年に渡り1等海佐として現場指揮に立ち、その上で昇った堂々の将官ポストであった。
(画像提供:陸上自衛隊第36普通科連隊公式Webサイト)
(画像提供:海上自衛隊横須賀地方隊公式Webサイト)
佐官(3等海佐)以降でみると、水上艦艇の現場では護衛艦はつゆきで船務長兼副長を、また艦長ポストは護衛艦あさゆきで経験。
平成21年には、将来の海上自衛隊を担う幹部を育てる練習艦隊で幕僚としても勤務した他、護衛隊司令は日本海側の最重要拠点・舞鶴に司令部を置く第3護衛隊の司令として辣腕を振るった。
この期間中に、第14次派遣海賊対処行動水上部隊指揮官としても活躍したのは先述のとおりだ。
またその間、中央(海上幕僚監部)では防衛部防衛課勤務を経て、班長ポストは人事教育部厚生課の厚生班長と防衛部防衛課の防衛調整官で、課長ポストは防衛部の装備体系課長などで要職を歴任。
その一方で韓国防衛駐在官の極めて重要なポストを担い、また電気や機関に関する技術を修得させる海上自衛隊第二術科学校長としても辣腕を振るうなど、非常に幅広い活躍を見せた。
そして平成30年3月、海上自衛隊の技術開発の中枢とも言える開発隊群司令に着任し、海上優勢確保のために技術面から貢献するなど、顕著な実績を残し続けている。
31期のみならず、海上自衛隊を代表する最高幹部の一人と言ってよいだろう。
なお余談だが、上記画像の1枚目は、その開発隊群の隷下にあり様々な技術や兵器の実験に用いられる「試験艦あすか」の画像だ。
それに対し、下の画像は2012年4月に退役をした、先代の試験艦「くりはま」である。
一目瞭然で、試験艦くりはまの艦艇が小さなものであったことが、おわかり頂けると思うが、基準排水量でいうとわずか950トンであった。
それに対し、現在の試験艦あすかは、基準排水量が4250トン。
汎用型護衛艦クラスの大きさになり遠洋に出て各種試験研究を行えるようになったが、くりはまの時代はその艦艇の規模ゆえに、ほとんどの研究開発は日帰りで往復できる距離でしか、行うことができなかったそうだ。
もちろん艦が小規模であれば、実験できる細目も極めて限定的であっただろう。
そのような限られたリソースの中で、大きな成果を出し続けた開発隊群(開発指導隊群)の先人の皆様の苦労は並大抵ではなかったはずだ。
開発隊群には、そんなエピソードもあることを、少し知っておいて貰えれば嬉しく思う。
では最後に、その下と同期である31期組の人事の動向について見てみたい。
31期組は、2018年夏の将官人事で最初の海将が選抜されたばかりの年次にあたる。
そして2019年3月現在で、その海将の任にあるのは以下の幹部たちだ。
酒井良(第31期)・大湊地方総監(2018年8月)
園田直紀(第31期)・航空集団司令官(2018年12月)
※肩書はいずれも2019年3月現在。( )は海将昇任時期。
以上のようになっており、まずは酒井と園田の2名が1選抜で海将に昇任し、同期の最高幹部人事の中心になっているといったところだ。
31期組の海将人事の場合、2019年3月までの昇任を「1選抜(前期・後期)」と呼ぶので、あるいはこの春の人事で昇任するものがあれば、酒井と園田に加えてそれら幹部が31期組海上幕僚長候補に関する人事の中心になっていくと思われる。
下については、韓国防衛駐在官に派遣海賊対処行動水上部隊指揮官など豊富な海外経験に加え、技術系の幹部としても大きな成果を残してきた幹部だ。
今後もさらに、技術系の要職を中心に、また海外畑の責任者として活躍する場面もあるのではないだろうか。
いずれにせよ、この先2020年代前半にかけて、我が国の国防の中心として活躍をすることは間違いのない最高幹部である。
その動向には今後も注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:外務省在オマーン日本国大使館公式Webサイト)
◆下淳市(海上自衛隊) 主要経歴
昭和
62年3月 海上自衛隊入隊(第31期)
平成
10年1月 3等海佐
10年8月 はつゆき船務長兼副長
12年12月 海上幕僚監部防衛部防衛課
13年7月 2等海佐
14年10月 あさゆき艦長
17年6月 韓国防衛駐在官
18年7月 1等海佐
20年12月 海上幕僚監部人事教育部厚生課厚生班長
21年10月 練習艦隊幕僚
22年12月 海上幕僚監部防衛部防衛課防衛調整官
23年8月 第3護衛隊司令
24年12月 第14次派遣海賊対処行動水上部隊指揮官
25年8月 海上幕僚監部防衛部装備体系課長
27年12月 第2術科学校長 海将補
30年3月 開発隊群司令
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