阿部慎治(あべ・しんじ)|第33期相当・第28普通科連隊長

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その阿部が陸上自衛隊に入隊したのは平成元年3月。

原隊(初任地)は津軽海峡の本州側、青森県に所在する第5普通科連隊であり、八甲田山の冬季雪中戦技演習で知られる精鋭部隊で、初級幹部の時代を過ごした。


(画像提供:防衛省公式Webサイト

その後、職種部隊では東京・練馬の第1普通科連隊が2回、宮城県の第22普通科連隊では副連隊長として勤務。

富士に所在する部隊訓練評価隊でも2度にわたり要職を担い、また研究本部でも指揮を執るなど、研究系の補職も目立つのが、そのキャリアの特徴だ。

そして中央業務支援隊の総務部長を経て、29年8月からこの函館の地で指揮を任されている。

広い視野から部隊を俯瞰する、非常に頼もしい連隊長であると言ってよいだろう。

 

なおこの函館の地は、先述のベレンコ中尉亡命事件のように、ロシアからのアクセスが容易という意味でも、国防の最前線となる非常に重要な場所だ。

時代は下り冷戦ムードは当時と一変しているとは言え、ロシアの領土的野心が衰えることは絶対にありえない。

今現在の損得計算で日本に侵攻するメリットがないと言うだけであって、クリミアがそうであったように、ロシアという国は損得で割が合えば必ず他国を侵略する意図を隠さない国だ。

そのような意味においては、緊張関係が緩んでいるとされる今の時代にこそ、有事に備え準備を怠ってはならない重要な時期と考えるべきであり、阿部にかかる国民からの期待は極めて大きいと言えるだろう。

足寄や留萌が道北と道西をしっかりと守り、函館は南の玄関口を固め、時代の変化に応じた新たな防衛体制を構築し、精強さを維持し続ける必要があるのではないだろうか。

 

では最後に、その阿部と同期である33期組の人事の動向を見てみたい。

33期組は2014年に最初の陸将補が選抜され、2020年に最初の陸将が選抜される予定になっている年次だ。

そして2019年7月現在で、以下の幹部たちが陸将補の任にあたっている。

 

冨樫勇一(第33期)・陸上幕僚監部人事教育部長(2014年8月)

山根寿一(第33期)・第13旅団長(2014年8月)

牛嶋築(第33期)・東北方面総監部幕僚長兼ねて仙台駐屯地司令(2014年8月)

末吉洋明(第33期)・陸上幕僚監部運用支援・訓練部長(2014年8月)

廣惠次郎(第33期)・陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部長(2015年3月)

児玉恭幸(第33期)・教育訓練研究本部副本部長兼ねて総合企画部長(2015年8月)

梅田将(第33期相当)・警務隊長(2015年12月)

酒井秀典(第33期)・第1ヘリコプター団長兼ねて木更津駐屯地司令(2016年3月)

宮本久徳(第33期)・高射学校長兼ねて下志津駐屯地司令(2016年12月)

堀江祐一(第33期相当)・陸上自衛隊高等工科学校長兼ねて武山駐屯地司令(2017年3月)

楠見晋一(第33期)・中央情報隊長兼ねて陸上総隊司令部情報部長(2017年8月)

更谷光二(第33期)・東北方面総監部幕僚副長(2018年3月)

竹内綱太郎(第33期)・化学学校長(2018年12月)

豊田真(第33期)・第1施設団長(2018年12月)

高木勝也(第33期)・第1高射特科団長(2019年4月)

※肩書はいずれも2019年7月現在。( )内は陸将補昇任時期。

 

以上のような状況になっており、まずは冨樫、山根、牛島、末吉の4名が中心になって、33期組の最高幹部人事は進んでいくことになるだろう。

 

阿部については、機動力を活かした部隊だけでなく、厳しい自然環境での部隊指揮にも豊富な経験を持つ指揮官だ。

今後はさらに、陸自が目指す諸職種混合の初期戦闘能力を高めていく部隊づくりの分野で、その手腕を発揮していくことになるのではないだろうか。

その活躍は非常に楽しみであり、今後もしっかりと注目を続けながら、応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。


(画像提供:陸上自衛隊函館駐屯地公式Webサイト

◆阿部慎治(陸上自衛隊) 主要経歴

平成
1年3月 陸上自衛隊入隊(第33期相当)
2年3月 第5普通科連隊(青森)
8年3月 幹部候補生学校(前川原)
11年3月 第1普通科連隊(練馬)
12年3月 富士学校(富士)
13年8月 部隊訓練評価隊(北富士)
14年3月 評価支援中隊長(北富士)
15年3月 陸上幕僚監部調査(市ヶ谷)
18年3月 陸上幕僚監部情報(市ヶ谷)
19年3月 第1普通科連隊(練馬)
21年3月 西部方面総監部(健軍)
23年3月 部隊訓練評価隊(北富士)
25年3月 第22普通科連隊副連隊長(多賀城)
27年3月 陸上自衛隊研究本部(朝霞)
27年12月 中央業務支援隊総務部長(市ヶ谷)
28年7月 1等陸佐
29年8月 第28普通科連隊長兼函館駐屯地司令

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