大庭秀昭(おおば・ひであき)|第30期・第1師団長

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その大庭が陸上自衛隊に入隊したのは昭和61年3月。

初任地は、多くの幹部候補生がその配属を尻込みすると言われている第25普通科連隊(遠軽)だ。

北海道の中でももっとも自然環境が厳しい駐屯地の一つで、「風雪磨人」の合言葉で知られる、北の最精鋭部隊である。

この厳しい北の大地で、初級幹部として非常に厳しい自衛官生活のスタートを切った。

(画像提供:陸上自衛隊第1師団公式フェイスブック

その後、現場にあっては富士学校普通科部教官、第12師団第3部訓練班長、幹部学校教育部教官など教育・訓練系が目立つ補職を歴任。

中央や地方隊の司令部にあっては、陸幕防衛部研究科研究班、西部方面総監部防衛部防衛課長、東北方面総監部防衛部長などで要職を歴任した。

そして、ある意味でその集大成とも言える幹部候補生学校長に、平成27年3月に着任。

29年3月に北部方面総監部幕僚長に転じ、現統合幕僚長である山崎幸二(第27期)、前総監であった田浦正人(第28期)を、2年半に渡って支え続けた。

そして令和元年8月、陸将に昇任すると我が国の首都圏を防衛する第1師団長に上番し、ますます活躍を続けている。

文字通り、我が国を代表する最高幹部の一人であると言ってよいだろう。

 

ところでこの時期、大庭が第1師団長に昇ったのはなぜなのだろうか。

最高幹部としては異例の、2年半にも渡る北部方面総監部幕僚長の在任期間の後職としてこのポストに昇ったのは、私は大庭にこそ「即位礼を担当する責任者」を任せたかった、防衛省や関係者の意向であったと考えている。

天皇陛下の即位礼に関して何らかの責任を持つことなど、末代までの誇りだ。

そして大庭こそ、その任務にふさわしいと、陸自や防衛省の関係者が考えた結果の、この時期の、1師団長・陸将への昇任であったのではないだろうか。

当否はともかく、私はこの誇りある任務が大庭に任されたことを、本当に嬉しく思いながら一連の儀式を厳かな気持ちで見ていた。

ぜひ、大庭という自衛官とその人物像と併せて、「即位礼の一つの出来事」として、興味を持ってもらえれば幸いだ。

 

では最後に、その大庭と同期である30期組の動向について見てみたい。

30期組は、既に1選抜の陸将が出揃っており、同期の陸上幕僚長候補という意味では絞り込みが終わっている。

そして2019年10月現在、その候補者たる30期組の陸将にある幹部は、以下の通りになっている。

 

吉田圭秀(第30期相当)・北部方面総監(普通科出身・2017年8月)

小野塚貴之(第30期)・東部方面総監(施設課出身・2017年8月)

野澤真(第30期)・中部方面総監(野戦特科出身・2017年8月)

髙田祐一(第30期)・富士学校長(普通科出身・2017年8月)

田中重伸(第30期)・教育訓練研究本部長兼目黒駐屯地司令(航空科出身・2017年12月)

大庭秀昭(第30期)・第1師団長(普通科出身・2019年8月)

鈴木直栄(第30期)・第10師団長(野戦特科出身・2019年4月)

※肩書はいずれも2019年10月現在。( )は陸将昇任時期。

 

以上のようになっており、30期組は吉田、小野塚、野澤、髙田の4名が、極めて近い将来の陸幕長候補と言うことになるだろう。

中でもおそらく、大本命として陸自内外から期待を集めているのは、おそらく高田であろうと予想している。

次の次の陸上幕僚長候補として、内局はもちろん、政治家サイドでも強く意識されている存在ではないだろうか。

 

大庭については、率直に言って陸自の人事の慣例から考えて、陸上幕僚長に昇る人事の考課上にはいない。

さらに言えば、あるいは第1師団長ポストを2年務めて、このまま退役になる可能性もあるのではないだろうか。

しかしながら、私はある意味で、この誇りある頭号師団長としてのポストのまま、大庭の退役が見たいと思っている。

もちろん、大庭ほどの自衛官がまもなく退役をするということ自体が国家的損失であり、それを望むものではない。

しかしもはや、数年以内の退役が確実なほどに偉くなってしまったのであれば、ぜひ最後は、誇りある第1師団長として退役をしてもらいたいと、願っている。

指揮官として現場にあり、栄誉礼で自衛隊を去ることを許されるのは、自衛官にとって最高に誇りある名誉だ。

そして大庭は、それを受けるにふさわしい自衛官人生であった。

そんな思いで、大庭の活躍に注目している。

 

いずれにせよ、大庭を始めとした30期組の陸将は、いままさに我が国の平和と安全にもっとも重い責任を担っている世代である。

その活躍には今後も注目し、応援していきたいと願っている。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。

(画像提供:陸上自衛隊第1師団公式フェイスブック

◆大庭秀昭(陸上自衛隊) 主要経歴

昭和
61年3月 陸上自衛隊入隊(第30期)
62年3月 第25普通科連隊

平成
5年8月 富士学校普通科部教官
9年1月 3等陸佐
9年8月 第12師団第3部訓練班長
11年3月 陸上幕僚監部防衛部研究科研究班
12年7月 2等陸佐
15年3月 幹部学校教育部教官
15年8月 陸上幕僚監部調査部調査課中期担当
17年1月 1等陸佐
17年8月 幹部学校付
18年8月 西部方面総監部防衛部防衛課長
21年3月 第37普通科連隊長
23年8月 東北方面総監部防衛部長
25年12月 第10師団副師団長
26年3月 陸将補
27年3月 幹部候補生学校長
29年3月 北部方面総監部幕僚長

令和
元年8月 第1師団長 陸将

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