納冨中(防衛大学校幹事・陸将)|第29期・陸上自衛隊

その納冨が陸上自衛隊に入隊したのは昭和60年3月。

1等陸佐に昇ったのが16年1月だったので、29期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。

さらに陸将補に昇ったのが20年6月であったが、本来であれば29期組の1選抜将補は22年夏のはずだったので、それよりも2年以上早い昇任であった。

これは、米国防衛駐在官としてアメリカに赴くための、防衛駐在官を巡る特別な昇任のルールのためであり、事実上は1選抜という扱いになると思われる。

そして陸将に昇ったのは、29期組の通常通り、28年7月。

あらゆる階級を、人事のルール上で最短となる速さで駆け上がってきたエリート中のエリートである。


(画像提供:防衛省防衛大学校公式Webサイト

その納冨だが、経歴は極めて充実しており、原隊(初任地)は我が国の国防の最前線とも言ってよい、名寄駐屯地の第2特科連隊。

冷戦時代、対ソ連戦争の最前線と位置づけられた、1線級の戦闘部隊が駐屯する最北の地であり、この精鋭集団に揉まれる形で、初級幹部としての時代を過ごした。

その後は、外務省欧亜局西欧第1課での勤務を経験すると、ハーバード大学ケネディー行政大学院に留学し、修士課程を修めるとそのまま研究員としても勤務。

さらに、ペンシルベニアに所在する米国陸軍戦略大学にも留学するなど、非常に充実した海外経験を積み上げる。

そして、自衛官が経験するポストの中での一つの最高峰と言ってもよいだろう。

在米国の防衛駐在官(国防・陸軍担当)としてワシントンDCに赴き、我が国にとって最大の同盟国であり、安全保障の根幹とも言える米国との「軍人外交」で、非常に大きな成果を挙げた。

その間、職種部隊勤務でももちろん抜かりはない。

連隊長ポストは、新たな国防の最前線である北熊本の第8特科連隊で上番。

中央即応集団副司令官や第9師団長といった要職を歴任し、30年8月から防衛大学校幹事を務めていると言う状況だ。

これ以上は無い米国通であり、自衛隊の最高幹部にとって必須とも言える条件のすべてを満たす、非常に頼もしい陸将の一人となっている。

では最後に、その納冨と同期である29期組の人事の動向について見てみたい。

29期組の将官は、一部で既に勇退も始まっている年次であり、今まさに、我が国の平和と安全に最も重い責任を担っている世代だ。

そして2018年11月現在で、29期組で陸将に在るのは以下の最高幹部となっている。

上尾秀樹(第29期)・東北方面総監(2016年7月)

高田克樹(第29期)・東部方面総監(2016年7月)

本松敬史(第29期)・統合幕僚副長(2016年7月)

納富 中(第29期)・防衛大学校幹事(2016年7月)

柴田昭市(第29期)・防衛装備庁長官官房装備官(2017年3月)

山内大輔(第29期)・陸上自衛隊補給統制本部長兼ねて十条駐屯地司令(2017年3月)

清田安志(第29期)・第6師団長(2017年8月)

岩村公史(第29期)・第9師団長(2018年8月)

権藤三千蔵(第29期)・陸上自衛隊関東補給処長兼ねて霞ヶ浦駐屯地司令(2018年8月)

※肩書はいずれも2018年11月現在。( )は陸将昇任時期。

以上のようになっており、あくまでも2018年11月現在での状況だが、29期組からは上尾と高田の2名が先に方面総監に着任し、一歩抜け出した形になっている。

ただ、本松と納富もまだまだ、方面総監に着任する可能性があり、またそうなると陸上総隊司令官に着任する可能性もあるなど、この4名はほとんど差がないと考えてよいだろう。

上尾、高田、本松、納富が横一線という状況で、それぞれが重い責任を果たしている。

その中でも、納冨については陸自を代表する米国通であることを含めると、まだまだ我が国の国防にとって無くてはならない幹部であり、方面総監に昇る可能性は高いと考えて良さそうだ。

その先のことについては、前後の期が関係し、また運といった要素も絡んでくることから予想は容易ではないが、いずれにせよその活躍が我が国の国防を左右する存在であることだけは間違いがない状況である。

納冨をはじめ、今まさに日本の平和と安全に重い責任を担っている、29期組の最高幹部たちだ。

その活躍にはこれからも注目を続け、そして応援していきたい。

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。


(画像提供:陸上自衛隊第9師団公式Webサイト

◆納冨中 第9種団長(陸将) 主要経歴

昭和
60年3月 陸上自衛隊入隊(第29期)
60年9月 第2特科連隊 (北海道名寄)

平成
4年8月 幹部学校付指揮幕僚課程(東京都市ヶ谷)
6年8月 外務省欧亜局西欧第1課(東京霞が関)
8年1月 3等陸佐
8年8月 統幕事務局第5室軍備管理班(東京都檜町)
10年6月 ハーバード大学ケネディー行政大学院修士課程(ボストン)
11年7月 ハーバード大学ケネディー行政大学院研究員(ボストン) 2等陸佐
12年8月 陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班(東京市ヶ谷)
16年1月 1等陸佐
16年6月 米国陸軍戦略大学(ペンシルベニア)
17年8月 陸上幕僚監部教育訓練部訓練・演習班長(東京市ヶ谷)
19年3月 第8特科連隊長(北熊本)
20年6月 在米国防衛駐在官国防・陸軍担当(ワシントンDC) 陸将補
23年8月 中央即応集団副司令官・国際担当(東京朝霞)
24年7月 陸上幕僚監部運用支援・情報部長(東京市ヶ谷)
26年8月 東北方面総監部幕僚長兼ねて仙台駐屯地司令(仙台)
28年7月 第9師団長 陸将
30年8月 防衛大学校幹事

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