その服部が陸上自衛隊に入隊したのは、昭和60年3月。
1等陸佐に昇ったのが平成16年1月であり、29期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。
原隊(初任地)は立川に所在する第1飛行隊であり、首都圏の空の安全を担う同地で、初級幹部として厳しい自衛官生活のスタートを切った。
(画像提供:陸上自衛隊明野駐屯地公式Webサイト)
そのキャリアは、航空科の幹部としてのエリートらしい非常に充実したものとなっており、職種部隊では政経中枢師団・第3師団の第3飛行隊長に、2等陸佐の頃に上番。
さらに1佐に昇任後は、我が国の21世紀の最前線・西部方面航空隊の隊長兼高遊原分屯地司令にも着任した。
陸将補に昇任後は、同じ西部方面隊の第8師団副師団長兼北熊本駐屯地司令を務め、航空学校副校長も経験している。
その間中央では、研究本部研究員や幹部学校戦略教官室勤務などの教育・研究職のほか、統合幕僚監部の防衛計画部防衛班長といった要職にも着任。
陸幕では装備部航空機課長も務め、また平成23年8月からは自衛隊兵庫地方協力本部長も務めるなど、非常に幅広い分野で最高幹部として手腕を発揮してきた。
そして平成28年12月、航空科の幹部としてもっとも誇り高いポストの一つである第1ヘリコプター団長に着任し、陸自大改革の一翼を主導。
その後職として、平成30年3月に陸上自衛隊航空学校長兼ねて明野駐屯地司令に着任し、空の精鋭を教育・育成する極めて重い任務を担っている。
29期だけでなく、自衛隊を代表する最高幹部の一人と言ってよいだろう。
その活躍に、我が国の命運が託されているキーパーソンの一人である。
では最後に、その服部と同期である29期組の人事の動向について見てみたい。
29期組の将官は、一部で既に勇退も始まっている年次であり、今まさに、我が国の平和と安全に最も重い責任を担っている世代だ。
そして2019年6月現在で、29期組で陸将に在るのは以下の最高幹部となっている。
上尾秀樹(第29期)・東北方面総監(2016年7月)
高田克樹(第29期)・東部方面総監(2016年7月)
本松敬史(第29期)・西部方面総監(2016年7月)
納富 中(第29期)・防衛大学校幹事(2016年7月)
柴田昭市(第29期)・防衛装備庁長官官房装備官(2017年3月)
山内大輔(第29期)・陸上自衛隊補給統制本部長兼ねて十条駐屯地司令(2017年3月)
清田安志(第29期)・統合幕僚学校長(2017年8月)
岩村公史(第29期)・第9師団長(2018年8月)
権藤三千蔵(第29期)・陸上自衛隊関東補給処長兼ねて霞ヶ浦駐屯地司令(2018年8月)
※肩書はいずれも2019年6月現在。( )は陸将昇任時期。
以上のような状況となっており、中でも29期の陸幕長候補は、本松、上尾、高田の3名に絞り込まれたと言って良いだろう。
あるいは山崎幸二(第27期)・第36代陸上幕僚長の後任が28期組である湯浅悟郎(第28期)から選ばれたために、29期組からは陸幕長が誕生しない可能性もあるが、こればかりは最後は運も左右する。
外野からは、楽しく見守りながら、重責を担う全ての幹部に最高のエールを送り続けたい。
服部については、現在のポストに着任したのが2018年3月。
そのため、最高幹部の任期の目安である2年後の2020年を考えると、あるいは航空学校長のポストが、最後の大仕事になる可能性があるかもしれない。
どれほどの功績があり、またどれほど優れた指揮官であっても、退役のときが必ず来てしまう。
そんなことを考えると非常に寂しい限りだが、だからこそ服部をはじめ、29期組の最高幹部たちの活躍は、特に注目をしていきたいと願っている。
我が国の空の安全保障体制に大いなる貢献をし、また実績を残した服部についての、ご紹介であった。
その動向には最後まで注目し、そして熱く応援して行きたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊第1ヘリコプター団公式Webサイト)
◆服部正(陸上自衛隊) 主要経歴
昭和
60年3月 陸上自衛隊入隊(第29期)
61年3月 第1飛行隊(立川)
平成
8年1月 3等陸佐
9年8月 陸上幕僚監部人事部補任課(檜町)
11年7月 2等陸佐
11年8月 第3飛行隊長(八尾)
13年3月 陸上幕僚監部教育訓練部訓練課(市ヶ谷)
16年1月 1等陸佐
16年3月 研究本部研究員(朝霞)
16年8月 防衛研究所(目黒)
17年8月 幹部学校戦略教官室(目黒)
18年3月 統合幕僚監部防衛計画部防衛班長(市ヶ谷)
19年12月 西部方面航空隊長兼高遊原分屯地司令(高遊原)
21年8月 陸上幕僚監部装備部航空機課長(東京)
23年8月 自衛隊兵庫地方協力本部長(兵庫)
25年12月 第8師団副師団長兼北熊本駐屯地司令(北熊本) 陸将補
26年12月 陸上自衛隊航空学校副校長(明野)
28年12月 第1ヘリコプター団長兼木更津駐屯地司令(木更津)
30年3月 陸上自衛隊航空学校長兼ねて明野駐屯地司令
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