その本吉が陸上自衛隊に入隊したのは平成4年3月。
なお先述のように、入隊年月は判明しているものの防衛大学校卒か一般幹部候補生なのか判明しないので、防大第36期は暫定的に記載している。
別途、明らかになれば加筆したい。
原隊(初任地)は、大隊長を務めている現職と同じ第6戦車大隊であり、この地において初級幹部に任官し、厳しい自衛官生活のスタートを切った。
(画像提供:陸上自衛隊東北方面隊公式フェイスブック)
その後、同じ大和駐屯地で第6偵察隊での任務も経験し、平成15年3月には機甲科の聖地・北海道第7師団隷下の第73戦車連隊で、中隊長を務めた。
我が国最精鋭の機甲科部隊の一つと言っても良い同部隊で中隊長を務めたことは、本吉にとっても思い出深い任務の一つとなったのではないだろうか。
またその後には、こちらも北海道・上富良野に所在する「対ロシア防衛の主力」、第2戦車連隊での勤務も経験するなど機甲科として充実した任務を経験し、次に一転して、首都圏の部隊に異動。
練馬に所在する第1偵察隊長に着任して、政経中枢における都市防衛の指揮官としても力を尽くしている。
そして平成27年8月からの富士学校勤務を経て、29年8月に第6戦車大隊長兼大和駐屯地司令に上番し、同部隊最期の指揮官として持てる力の全てを出し切っている。
現場に精通した、機甲科の幹部として非常に充実したキャリアを誇る幹部の一人であると言ってよいだろう。
では最後に、その本吉と同期である36期組の人事の動向について見てみたい。
36期組は、2017年8月の将官人事で最初の陸将補が選抜された年次にあたる。
そして、2019年1月現在でその任にあるのは、以下の幹部たちだ。
松永浩二(第36期)・沖縄地方協力本部長(2017年8月)
德永勝彦(第36期)・教育訓練研究本部研究部長(2017年8月)
堺一夫(第36期)・富士学校普通科部長兼富士学校諸職種協同副センター長(2017年8月)
藤岡史生(第36期)・北部方面総監部幕僚副長(2017年8月)
若松純也(第36期)・東部方面総監部幕僚副長(2017年12月)
南川信隆(第36期)・教育訓練研究本部訓練評価部長(2018年3月)
※肩書は全て2019年1月現在。( )は陸将補昇任時期。
※2018年夏の将官人事以降に昇任した将補について、年次未確認のために追記する可能性あり。
以上のようになっており、まずは松永、徳永、堺、藤岡の4名が、36期組の最高幹部人事では、先に昇任を果たしている形だ。
恐らく今後の陸将人事も、この4名を中心に選抜が進められていくことになるのではないだろうか。
ところで一つ、最後の第6戦車大隊長兼ねて大和駐屯地司令である本吉のご紹介を締めくくるに当たり、同駐屯地を巡る一つのエピソードをご紹介したい。
2019年1月現在で、「東日本震災 赤ちゃん」でグーグル画像検索すると1番目に出てくる画像、見覚えのある人も多いと思う。
おくるみに包まれた生まれたての赤ん坊を抱き、その赤ちゃんの顔を笑顔で見つめる自衛官の写真だ。
著作権の関係で貼ることができないが、津波に呑まれ両親からはぐれてしまったにも関わらず、自衛隊の救命活動でその生命を救われた、生後間もない新生児であった女児である。
実はこの赤ちゃんを抱くのは、大和駐屯地に所属の千葉浩司2等陸曹(44・当時)。
津波に呑まれ孤立した住宅地を、生存者がいないか捜索を行っていた千葉2曹の班によって震災の3日後に発見・救出され保護された時の様子だ。
赤ちゃんを眩しそうに、優しい目で見つめる千葉2曹の目線が、我が国の自衛官とはどういう人達であるのか。
その心根や強さと優しさの全てを表しているかのような、とても素晴らしい一枚であった。
そして当時、その写真はものすごい勢いで拡散し、
「感動的過ぎる」
「涙腺が崩壊した」
など自衛官のみなさんを称賛する書き込みで溢れ、震災と自衛官の活躍を象徴する写真として語り継がれることになった。
そんな第6戦車大隊と大和駐屯地で活躍する自衛官の皆さんであったが、間もなく組織再編となり、形を変えることになった。
ぜひその前に、本吉が率いる自衛官の皆さんの誇りある活躍を改めて、思い出して頂ける一つの話として記憶して頂くために、ここでご紹介をしておきたかった。
本吉と、大和駐屯地で力を尽くす自衛官の皆様の活躍を、今後ともお祈りし応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊第6師団公式Webサイト)
◆本吉幸則(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
4年3月 陸上自衛隊入隊(第36期)
4年10月 第6戦車大隊(大和)
7年8月 第6偵察隊(大和)
15年3月 第73戦車連隊中隊長(南恵庭)
15年7月 3等陸佐
17年3月 防衛大学校(横須賀)
20年3月 第2戦車連隊(上富良野)
22年3月 富士学校(富士)
25年7月 2等陸佐
25年8月 第1偵察隊長(練馬)
27年8月 富士学校(富士)
29年8月 第6戦車大隊長兼大和駐屯地司令(大和)
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