その菅野が陸上自衛隊に入隊したのは平成元年3月。
原隊(初任地)は兵庫県伊丹市に所在する第36普通科連隊だが、この部隊は阪神大震災に際して、連隊長判断で直ちに災害派遣に出動し、多くの人命を救ったことで知られる部隊だ。
そして菅野も、この原隊にあった時に阪神大震災を経験し、この救助活動に参加している。
先述のように、東日本大震災の最前線でも指揮を執っている菅野だが、あるいはこの時の経験も活きているのかも知れない。
(画像提供:内閣府PKO事務局公式Webサイト)
その後、中隊長ポストは九州小倉の第40普通科連隊で。
そして、守山に所在する第35普通科連隊長であった時に東日本大震災に赴いているが、災害復興支援活動が終了すると直ちに、同様に大地震で壊滅的な被害を受けたハイチに赴任することになる。
ハイチ派遣国際救援隊の第7次隊長としてであり、上記画像はその時の部隊の模様だ。
この際のハイチ派遣はしんがり部隊としての派遣であり、日本がこの国際活動で為すべきことの総仕上げとしての赴任であったが、ここでも菅野は与えられた任務を余すことなく完遂。
非常に大きな成果を挙げ、我が国の国益と世界平和のために多大な功績を残した。
またその間、中央(陸幕)では、教育訓練部教、運用支援・情報部、防衛部情報通信・研究課などで幅広く要職を歴任。
北富士駐屯地に所在する部隊訓練評価隊長なども務め、その後職として研究本部研究員(現・教育訓練研究本部研究員)に転じ、教育系の部署での強みを如何なく発揮している。
では最後に、その菅野と同期である33期組の人事の動向について見てみたい。
33期組は2014年に最初の陸将補が選抜され、2020年に最初の陸将が選抜される予定になっている年次だ。
そして2019年7月現在で、以下の幹部たちが陸将補の任にあたっている。
冨樫勇一(第33期)・陸上幕僚監部人事教育部長(2014年8月)
山根寿一(第33期)・第13旅団長(2014年8月)
牛嶋築(第33期)・東北方面総監部幕僚長兼ねて仙台駐屯地司令(2014年8月)
末吉洋明(第33期)・陸上幕僚監部運用支援・訓練部長(2014年8月)
廣惠次郎(第33期)・陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部長(2015年3月)
児玉恭幸(第33期)・教育訓練研究本部副本部長兼ねて総合企画部長(2015年8月)
梅田将(第33期相当)・警務隊長(2015年12月)
酒井秀典(第33期)・第1ヘリコプター団長兼ねて木更津駐屯地司令(2016年3月)
宮本久徳(第33期)・高射学校長兼ねて下志津駐屯地司令(2016年12月)
堀江祐一(第33期相当)・陸上自衛隊高等工科学校長兼ねて武山駐屯地司令(2017年3月)
楠見晋一(第33期)・中央情報隊長兼ねて陸上総隊司令部情報部長(2017年8月)
更谷光二(第33期)・東北方面総監部幕僚副長(2018年3月)
竹内綱太郎(第33期)・化学学校長(2018年12月)
豊田真(第33期)・第1施設団長(2018年12月)
高木勝也(第33期)・第1高射特科団長(2019年4月)
※肩書はいずれも2019年7月現在。( )内は陸将補昇任時期。
以上のような状況になっており、まずは冨樫、山根、牛島、末吉の4名が中心になって、33期組の最高幹部人事は進んでいくことになるだろう。
菅野については、原隊にあった時の阪神大震災から数えて、ハイチを含め、非常に多くの災害の現場で指揮を執り活躍を続けてきた幹部だ。
教育・研究系の部署でも活躍が目立ち、おそらく今後は陸上総隊の国際貢献系の部署で、さらにその豊富な知見を活かし活躍することになるのではないだろうか。
全自(全国自衛隊)剣道大会でも、優勝争いをするほどの剣豪でもある。
その活躍には今後も注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:内閣府PKO事務局公式Webサイト)
◆菅野隆(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
元年3月 陸上自衛隊入隊(第33期)
元年 月 第36普通科連隊小隊長(伊丹)
12年 月 第40普通科連隊中隊長(小倉)
年 月 陸上自衛隊幹部学校教育部(目黒)
年 月 陸上幕僚幹部教育訓練部教育訓練計画課(市ヶ谷)
年 月 陸上幕僚幹部運用支援・情報部運用支援課(市ヶ谷)
年 月 陸上幕僚幹部防衛部情報通信・研究課総括班長(市ヶ谷)
23年4月 第35普通科連隊長(守山)
24年8月 ハイチ派遣国際救援隊第7次隊長(ハイチ)
24年12月 第35普通科連隊長(守山)
25年4月 中央即応集団司令部幕僚副長(座間)
27年3月 部隊訓練評価隊長(北富士)
28年2月 陸上自衛隊富士学校付
29年1月 陸上自衛隊研究本部研究員
30年3月 陸上自衛隊教育訓練研究本部研究員
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