さて、その佐藤のキャリアについてだ。
防衛大学校で国際関係を専攻し卒業すると、そのまま国際関係の分野で活躍するキャリアを歩むことになる。
国際活動教育隊の隊長職は、ある意味でその集大成とも言えるもので、PKOを始めとした国際活動に必要な知識・技能を訓練し教育する機関だ。
(画像提供:防衛省公式Webサイト)
なお、少し陸上自衛隊の組織再編に興味を持っているひとであれば、
「あれ?」
と思う人もいるかも知れない。
というのも、国際活動教育隊は本来、2018年3月の陸上総隊発足とともに統合幕僚学校国際平和協力センターに吸収統合され、廃止になる予定だったからだ。
おそらく近い将来廃止され、予定通り統幕に吸収されるのかと思われるが、延期になっている背景にはあの南スーダン日報「問題」とされる問題があるのだろう。
というのも、2018年度末の2月から4月にかけて、稲田朋美・前防衛大臣が「存在しない」と明言した日報が、国際活動教育隊から見つかったというような”騒動”があったためだ。
この辺りの「騒動」や「問題」には、政治に対して多くの文句をつけたいところではあるが、記事の趣旨では無いので一切触れない。
ただ、国際活動教育隊が急遽、廃止延期になった背景には、おそらくこのような事があったのではないだろうか。
話を佐藤に戻す。
3佐の頃にゴラン高原派遣輸送隊を経験した佐藤はその後、連隊長を函館に所在する第28普通科連隊で経験。
さらに平成28年7月からは、ソマリア沖の海賊に対処する国際活動、派遣海賊対処行動支援隊の司令に着任し、現地に赴いている。
これら豊富な国際貢献活動の知見と経験を活かして、それを後進に教育する国際活動教育隊の隊長に着任した形だ。
これ以上はない、非常に適材適所の補職であると言えるだろう。
なお、同期である36期については、2017年夏の将官人事で最初の将官が選抜されたばかりであり、まだまだ多くの将官が選抜される年次ということになっている。
そして2019年4月現在で、将官にある36期組は以下の通りだ。
松永浩二(第36期)・沖縄地方協力本部長(2017年8月)
德永勝彦(第36期)・教育訓練研究本部研究部長(2017年8月)
堺一夫(第36期)・富士学校普通科部長兼富士学校諸職種協同副センター長(2017年8月)
藤岡史生(第36期)・陸上自衛隊幹部候補生学校長兼ねて前川原駐屯地司令(2017年8月)
若松純也(第36期)・東部方面総監部幕僚副長(2017年12月)
南川信隆(第36期)・教育訓練研究本部訓練評価部長(2018年3月)
※肩書は全て2019年4月現在。( )は陸将補昇任時期。
※2018年夏の将官人事で昇任した将補について、年次未確認のために追記する可能性あり。
以上のような状況になっており、まずは松永、徳永、堺、藤岡の4名が、36期組の中で頭一つ抜けた形になっている。
佐藤については、確たることはわからないが、おそらく国際活動教育隊の最後の隊長になるのではないだろうか。
そして同隊が統幕に吸収された後には、あるいはそのまま関係部署で要職を引き継ぐことになるものと予想している。
いずれにせよ、我が国の平和と安全は、佐藤のように国際平和に貢献する幹部自衛官の存在無くしては語れるものではない。
その活躍からは目を離さず、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:防衛省公式Webサイト)
◆佐藤和之(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
4年3月 陸上自衛隊入隊(第36期)
10年3月 普通科教導連隊 運幹
15年8月 第32普通科連隊 中隊長
17年2月 第19次ゴラン高原派遣輸送隊長
18年3月 陸上幕僚監部 教育訓練計画課
21年3月 統合幕僚監部運用第1課
23年4月 第61期幹部高級課程・第11期統合高級課程学生
23年7月 1等陸佐
24年3月 第28普通科連隊長
26年3月 中部方面総監部訓練課長
28年7月 派遣海賊対処行動支援隊司令
29年9月 研究本部 教訓センター
29年12月 国際活動教育隊
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