鹿子島洋(三重地方協力本部長・1等陸佐)|第36期・陸上自衛隊

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その鹿子島が陸上自衛隊に入隊したのは平成4年3月。

初任地は、北海道の釧路に所在する第27普通科連隊であり、先述のように中隊長ポストは第3普通科連隊で経験。

連隊長ポストは兵庫県伊丹市に所在する、第36普通科連隊を任された。


(画像提供:陸上自衛隊第36普通科連隊公式Webサイト

なおその第36普通科連隊。

阪神淡路大震災に際して、地元首長からの自衛隊出動要請が遅きに失する中で、連隊長の判断で直ちに被災地に駆けつけ、人命救助活動を開始したことで知られる。

なお本来、自衛隊は文民統制の原則があるので、どれほどの大災害でも自らの判断で動くことはできず、政府や地元自治体の要請に基づいて動くことを原則とする。

その一方で、自衛隊には「近傍派遣」と呼ばれる災害出動の形態がある。

部隊が所在する近傍で発生した災害については、都道府県からの要請がなくとも部隊長の判断で直ちに動くことができるというものだ。

阪神淡路大震災に際しては、当時の第36普通科連隊長が果敢にこの近傍派遣を援用し、震災発生後直ちに人命救助に動いた。

そして、当時の連隊長は黒川雄三・1等陸佐。

簡単に書いているようだが、時代は総理大臣が社会党の村山富市であり、自衛隊に対して極めて厳しい社会環境であったと言って良い。

さらに兵庫県知事は、自衛隊に対する災害派遣出動要請が非常に遅かったのではないかと言う批判を受け続けることになった、貝原俊民のお膝元である。

有り体に言って、今とは比べもにならないほどに、自衛隊に対する理解が全く無かった時代だ。

というよりも、近畿圏において自衛隊は、今では想像もできないほどに理不尽な扱いを受けていた世相と言ってよいだろう。

その中にあって、自衛隊法第83条3項に明記されているとはいえ、近傍派遣を援用し独断で動けば、事実上の更迭をされることにもなりかねない。

にもかかわらず、勇気ある決断で直ちに行動を起こした黒川連隊長は、真の陸自魂をもった指揮官であったと言ってよいだろう。

ちなみに、地元自治体から出動要請「らしきもの」が最初に出されたのは震災当日の午前10時。

それに対し、36普連が行動を起こしたのは同午前7時30分。

死傷者の9割が、建物などに潰された圧死もしくは窒息死であった事実を考えると、この行動の速さは非常に大きく、36普連の歴史に残る大きな仕事であった。

鹿子島はそのような誇り高い連隊で指揮を執り、連隊長としての大きな仕事をやり遂げている。

 

では最後に、鹿子島と同期である36期組の動向を簡単にご紹介しておきたい。

36期組は、2017年8月の将官人事で最初の陸将補が選抜された年次にあたる。

そして、2018年8月現在でその任にあるのは、以下の幹部たちだ。

 

松永浩二(第36期)・沖縄地方協力本部長(2017年8月)

德永勝彦(第36期)・教育訓練研究本部研究部長(2017年8月)

堺一夫(第36期)・富士学校普通科部長兼富士学校諸職種協同副センター長(2017年8月)

藤岡史生(第36期)・北部方面総監部幕僚副長(2017年8月)

若松純也(第36期)・東部方面総監部幕僚副長(2017年12月)

南川信隆(第36期)・教育訓練研究本部訓練評価部長(2018年3月)

※肩書は全て2018年8月現在。( )は陸将補昇任時期。

※2018年夏の将官人事で昇任した将補について、年次未確認のために追記する可能性あり。

 

以上のような状況になっており、まずは松永、徳永、堺、藤岡の4名が、36期組の中で頭一つ抜けた形になっている。

鹿子島については、中央での人事や援護の仕事が目立つ高級幹部だ。

その現場仕事としてもっとも上位に位置すると言って良い地方協力本部長を務めているので、後職ではさらに、中央で関連した要職に就き、活躍することになるのではないだろうか。

 

36期組は、2020年代後半にかけて我が国の平和と安全を中心になって担っていく世代である。

その一人である鹿子島の活躍からは目を離さず、今後とも応援していきたい。

 

※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。


(画像提供:陸上自衛隊第36普通科連隊公式Webサイト

◆鹿子島洋(陸上自衛隊) 主要経歴

平成
4年3月 陸上自衛隊入隊(第36期)
5年3月 第27普通科連隊
12年3月 富士学校普通科部教育課訓練班
12年8月 幹部学校付(#46指揮幕僚課程)
14年8月 福岡地方連絡部援護課
16年8月 第3普通科連隊中隊長
18年3月 陸上幕僚監部人事部募集・援護課総括班
20年3月 陸上幕僚監部運用支援・情報部運用支援課企画班
21年8月 陸上幕僚監部教育訓練部教育訓練課教育班
23年4月 防衛大学校訓練部首席指導教官
24年1月 1等陸佐
24年3月 幹部学校付(#63幹部高級課程、#13統合高級課程)
25年3月 陸上幕僚監部人事部募集・援護課募集班長
27年4月 第36普通科連隊長
29年3月 自衛隊三重地方協力本部長

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