その安孫子が陸上自衛隊に入隊したのは平成4年3月。
1選抜で1等陸佐に昇るのは平成23年1月の昇任1佐人事である年次だが、この時もそれ以降も、1佐に昇任した発令が防衛省の記録に見られない。
先述のように、安孫子は防衛駐在官としてスウェーデンにあったので、おそらくその赴任前の21年、外務省に出向する際に1佐に昇任しているものと思われる。
(画像提供:京都地方協力本部公式フェイスブック)
また原隊(初任地)は、東千歳に所在する第1高射特科群で、同地で初級幹部としての見識を積み上げさらに第1高射特科団本部に転じるが、以降は職種部隊の勤務から長く遠ざかる。
その間、統幕(統合幕僚監部)などで要職を歴任し、またイラクのバグダッドに赴任し連絡班長を務めるなど、海外や中央での勤務が非常に目立つキャリアだ。
また平成26年12月からは、久しぶりの職種部隊に配置されると、いきなりの国防の最前線である第15高射特科連隊長兼ねて八重瀬分屯地司令を任された。
そしてその後職として、京都地方協力本部長の要職を経て、陸上自衛隊高射学校の第1教育部長に着任している。
高射の幹部ではあるが、そのコミュニケーション能力の高さと人間力の高さ、また組織や部下の面倒見の良さが伺えるような、非常に充実したキャリアを駆け抜けてきた幹部である。
では次に、その安孫子と同期である36期組の人事の動向を見てみたい。
36期組は、2017年8月の将官人事で最初の陸将補が選抜された年次にあたる。
そして、2018年8月現在でその任にあるのは、以下の幹部たちだ。
松永浩二(第36期)・沖縄地方協力本部長(2017年8月)
德永勝彦(第36期)・教育訓練研究本部研究部長(2017年8月)
堺一夫(第36期)・富士学校普通科部長兼富士学校諸職種協同副センター長(2017年8月)
藤岡史生(第36期)・北部方面総監部幕僚副長(2017年8月)
若松純也(第36期)・東部方面総監部幕僚副長(2017年12月)
南川信隆(第36期)・教育訓練研究本部訓練評価部長(2018年3月)
※肩書は全て2018年8月現在。( )は陸将補昇任時期。
※2018年夏の将官人事で昇任した将補について、年次未確認のために追記する可能性あり。
以上のようになっており、まずは松永、徳永、堺、藤岡の4名が、36期組の最高幹部人事で一歩リードしている状況だ。
おそらくこの4名を中心に、2023年夏の陸将人事も進んでいくことになるだろう。
安孫子については、これだけ充実したキャリアを誇り、また政令指定都市での地方協力本部長という要職経験者でもある。
今後も、高射の現場だけでなく広く様々なポストを歴任していくと思われるが、特に後職でどの配置に就くのか、注目していきたい。
いずれにせよ、36期組は2020年代なかばにかけて、日本の平和と安全を中心になって担っていく世代だ。
その活躍からは今後も目を離さず、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:京都地方協力本部公式フェイスブック)
◆安孫子一(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
4年3月 陸上自衛隊入隊(第36期)
4年 月 第1高射特科群(東千歳)
年 月 第1高射特科団本部(東千歳)
13年 月 幹部学校付(市ヶ谷)
15年 月 西部方面総監部防衛部訓練課(健軍)
18年 月 統合幕僚事務局第5室(市ヶ谷)
年 月 統合幕僚監部運用部運用第2課(市ヶ谷)
19年 月 イラクバグダッド連絡班長(イラク)
年 月 統合幕僚監部運用部運用第2課(市ヶ谷)
年 月 陸上幕僚監部運用支援・情報部付(市ヶ谷)
21年 月 在スウェーデン防衛駐在官(スウェーデン)
24年 月 統合幕僚学校教官(目黒)
24年 月 陸上幕僚監部運用支援・情報部情報課武官業務班長(市ヶ谷)
26年12月 第15高射特科連隊長兼ねて八重瀬分屯地司令(八重瀬)
28年8月 京都地方協力本部長
30年8月 陸上自衛隊高射学校第1教育部長
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