その重責を担う藤田が、陸上自衛隊に入隊したのは、昭和59年3月。
1等陸佐に昇ったのが平成15年1月だったので、28期組1選抜(1番乗り)となるスピード出世だ。
陸将補に昇ったのは24年12月、陸将に昇ったのが30年3月であったが、28期組として最後に昇任した陸将ということになるだろう。
(画像提供:陸上自衛隊高射学校公式Webサイト)
(画像提供:防衛省防衛白書1990公式Webサイト)
ところでなぜ近年、これほど高射特科の存在感が高まっているのか、ということだ。
言うまでもなく、2018年現在の我が国の安全保障環境は、西方(西部方面隊)がもっとも、実際の紛争に巻き込まれる可能性が高い地域となっている。
さらに限定すると尖閣諸島周辺海域ということになるが、この尖閣周辺が戦場になるというのは、遠く離れた無人島だけが戦域になるというわけではない。
陸上自衛隊は、最大射程距離が300kmにも届こうかという地対艦ミサイル部隊を、近い内に尖閣に最寄りとなる宮古島や石垣島に配備することを予定している。
もちろん、その配備が完了すれば尖閣周辺の海域を広くカバーし、我が国の防衛体制はますます盤石なものとなる見込みだ。
ただしそうなれば、中国人民解放軍は間違いなく、尖閣に侵攻を始めると同時に、宮古島や石垣島を無力化する作戦に同時着手するだろう。
あるいは直接、歩兵部隊を上陸させる事態があるかもしれない。
少なくとも、その想定はしておく必要がある。
このような際に、敵性勢力の近接を許さない準備は我が国も万全の体制で準備ができるが、一方で空対地ミサイルや巡航ミサイルでの攻撃を受け続けると、これら迎撃体制にもほころびが生じるだろう。
そしてそのような攻撃に応戦し、地上の応戦ユニットを健全に維持する役割を果たすのが、藤田が長年に渡りエキスパートとして務めてきた高射特科だ。
我が国の万全の反撃体制が維持できるのかどうか。
その大きな鍵を、高射特科部隊が握っており、必然的にその存在感も大きくなっていると言ってよいだろう。
ちなみに上記画像2枚め。
富士総火演などで水平射撃をしているところしか見ないので、ガンタンクのように野戦特科の兵装だと思われている人も多いかも知れない。
しかしこれは87式自走高射機関砲であり、本来は低高度にある敵のユニットやミサイルを迎撃するための武器だ。
高射特科の可愛いメンバーなので、ぜひ覚えておいて欲しい。
では最後に、藤田と同期である28期組の人事の動向について、記載しておきたい。
28期組は、おそらく2019年夏の将官人事でいずれか1名が、陸上幕僚長に昇ることになるであろう年次だ。
そしてその候補者たる陸将には、2018年10月現在で以下の幹部たちがその任にある。
住田和明(第28期)・陸上総隊司令官 高射特科出身
田浦正人(第28期)・北部方面総監 機甲科出身
岸川公彦(第28期)・中部方面総監 施設科出身
湯浅悟郎(第28期)・西部方面総監 普通科出身
岩谷要(第28期)・陸上自衛隊研究本部長 施設科出身
藤田浩和(第28期)・陸上総隊幕僚長 高射特科出身
甲斐芳樹(第28期)・第10師団長 普通科出身
この中で、陸将として経験したポストや現任などを考えると、実質的にその候補者となるのは住田、田浦、岸川、湯浅の4名となるだろう。
更に絞り込むと、湯浅は実は期別こそ28期だが、現陸上幕僚長の山崎幸二(第27期)よりも年長者であり、その可能性は低いのではないだろうか。
そしておそらく、東部方面総監から陸上総隊司令官に昇った住田が、第37代の陸上幕僚長に着任することになると予想している。
いずれにせよ、藤田を含めてこの7名が、2018年現在の我が国の平和と安全に最も重い責任を担い、日々厳しい任務に励んでいる最高幹部たちである。
ぜひ、トップのイスだけでなく、それぞれのポジションで文字通り死力を尽くし、任務に励む全員に注目し、そして応援をしてもらえれば幸いだ。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊陸上総隊公式Webサイト)
◆藤田浩和(陸上自衛隊) 主要経歴
昭和
59年3月 陸上自衛隊入隊(第28期)
平成
7年1月 3等陸佐
10年7月 2等陸佐
15年1月 1等陸佐
15年8月 幹部学校付
16年8月 陸上自衛隊研究本部研究員
17年3月 陸上幕僚監部教育訓練計画課制度班長
19年3月 第6高射特科群長
21年3月 東部方面総監部人事部長
24年3月 第2高射特科団長
24年12月 陸将補
26年3月 第1師団副師団長
27年3月 陸上自衛隊高射学校長兼下志津駐屯地司令
30年3月 陸上総隊司令部幕僚長 陸将
31年4月 陸上総隊司令部幕僚長のポストを最後に退役
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