その島守が陸上自衛隊に入隊したのは平成元年3月。
初任地が、まさに2018年3月の陸自大改革で廃止となった第5高射特科群(八戸)であった。
廃止の詳細は把握していないが、八戸駐屯地は第4地対艦ミサイル連隊が所在する駐屯地であり、近い将来、その主力は南西方面に移駐するのは確実であると思われる。
今回の第5高射特科群の廃止も、第101高射特科隊への縮小再編と言うことになっているので、あるいはその実態は、廃止ではなく南西方面への戦力のシフトということではないだろうか。
(画像提供:陸上自衛隊第15高射特科連隊公式Webサイト)
その後島守は、モザンビークやゴラン高原など、我が国が海外でPKOに乗り出した早い時期からこれら活動に従事。
平成19年には米国陸軍連絡官を務めるキャリアが記録に残っているなど、国際経験が非常に豊富な経歴が印象的だ。
なおこの際の米国陸軍連絡官だが、時期的に、イラク戦争以降の中東政策をめぐり、自衛隊が米中央軍司令部に陸海空連絡要員幹部を派遣し、調整していた頃に符合する。
このポストは、当時2等海佐であった海将補の伊藤弘(第32期)・内閣審議官(国家安全保障局担当)や、同じく当時2等空佐であった空将補の尾崎義典(第32期)・統合幕僚監部総務部長も任された、極めて重要な任務である(肩書はいずれも、2018年8月現在)。
おそらく島守も、この伊藤・尾崎の跡を継いで、この要職を任されていたのではないだろうか。
その後は、高射特科の現場で指揮を執る傍ら、小平学校で語学教育部長を、中央即応集団司令部では人事部長をつとめるなど、やはり国際貢献に関連する部署での活躍が目立つキャリアとなっているのが印象的だ。
そして平成29年12月からは、国防の最前線と言っても良い沖縄で、第15高射特科連隊長兼ねて八重瀬分屯地司令に補職されている。
まさに島守は、あれもこれもあらゆることを高いレベルで要求され、そして期待に応え続けてきた幹部であると言ってよいだろう。
最後に、その33期組の人事の動向について見てみたい。
33期組は、2014年夏の将官人事で最初の陸将補が選抜された年次にあたり、2020年の夏の将官人事で最初の陸将が選抜される事になっている。
そして2018年8月現在で、陸将補の任に在る幹部は以下の通りだ。
冨樫勇一(第33期)・陸上幕僚監部人事教育部長(2014年8月)
山根寿一(第33期)・第13旅団長(2014年8月)
牛嶋築(第33期)・東北方面総監部幕僚長兼ねて仙台駐屯地司令(2014年8月)
末吉洋明(第33期)・陸上幕僚監部運用支援・訓練部長(2014年8月)
廣惠次郎(第33期)・陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部長(2015年3月)
児玉恭幸(第33期)・陸上幕僚監部監察官(2015年8月)
梅田将(第33期相当)・大阪地方協力本部長(2015年12月)
酒井秀典(第33期)・第1ヘリコプター団長兼ねて木更津駐屯地(2016年3月)
宮本久徳(第33期)・第1高射特科団長(2016年12月)
堀江祐一(第33期相当)・陸上自衛隊高等工科学校長兼ねて武山駐屯地司令(2017年3月)
楠見晋一(第33期)・中央情報隊長兼ねて陸上総隊司令部情報部長(2017年8月)
更谷光二(第33期)・東北方面総監部幕僚副長(2018年3月)
※肩書はいずれも2018年8月現在。( )内は陸将補昇任時期。
※2018年8月の将官人事で昇任した幹部の確認が未了のため、加筆する可能性あり。
以上のような状況になっており、まずは富樫、山根、牛島、末吉の4名が中心になって、33期組の人事は進んでいくことになるだろう。
島守については、その豊富な国際経験から、おそらく今後も陸上総隊などで国際関係の要職を歴任していくことになるのではないだろうか。
高射特科の幹部ということとも併せて、非常に注目したい幹部である。
その活躍からは目を離さず、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊第15高射特科連隊公式Webサイト)
◆島守英次(陸上自衛隊) 主要経歴
平成
元年3月 陸上自衛隊入隊(第33期)
元年9月 第5高射特科群
6年6月 第3次PKOモザンピーク
11年7月 第6次PKOゴラン高原
11年8月 幹部学校付(指揮幕僚課程学生)
13年8月 高射学校
15年3月 陸上幕僚監部装備計画部
17年8月 第11高射特科隊長(真駒内)
19年5月 陸上幕僚監部(米国陸軍連絡官)
22年11月 幹部学校
23年4月 小平学校語学教育部長
25年4月 中央即応集団司令部人事部長
27年8月 陸上幕僚監部監理部総務課監理班長
29年12月 第15高射特科連隊長兼ねて八重瀬分屯地司令
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