その谷村が陸上自衛隊に入隊したのは昭和62年3月。
1等陸佐に昇ったのが平成18年7月であったので、第31期組1選抜後期(1番手グループ)となるスピード出世だ。
陸将補に昇ったのが30年3月だったので、10年以上に渡り1佐を務め現場を指揮した上での、堂々の将官昇任であった。
(画像提供:自衛隊体育学校公式Webサイト)
1佐以降の経歴で見ると、中央(陸上幕僚監部)では、運用支援課を経て班長ポストは人事教育部募集・援護課援護班長で。
おそらく課長相当ポストに相当するだろうか、防衛課では官房副長官補付となって、安全保障・危機管理担当を任務として、政治家のサポートにもあたった。
また幹部学校教官や宮城地方協力本部長を務めるなど、中央での人事教育部募集・援護課で班長ポストを務めた事と併せて、面倒見の良さや後進の指導・育成に強みを感じさせるポストでも要職を歴任。
職種部隊の現場では、極めて特徴的な編成で知られる対馬警備隊長兼ねて対馬駐屯地司令を務めたことは、先述のとおりだ。
平成26年8月からは、我が国の国防の最前線である第8師団で、その実務職の責任者たる、幕僚長も務めた。
そして平成30年3月に陸将補に昇任すると、自衛隊体育学校長として活躍を続けている。
教育や人材育成、後進の指導などに長けた、面倒見の良いお人柄を感じさせる、極めて充実したキャリアを誇る陸将補である。
ちなみに上記写真の1枚目だが・・・
これは何も、日曜日の20時から日テレで放送されているバラエティ番組に谷村が出演した際の画像、というわけではない。
実は初度視察の際に撮影された、緊張感あふれる指揮官巡察中の画像である。
それにしても通常、初度視察は緊張感が伝わる画像が多い中で、ジャージ姿の指揮官に短パンやトレーナーの曹士となれば、いかにも体育学校といった特徴的な一枚だ。
自衛隊には、こんな組織も存在することをぜひ、一人でも多くの国民に知ってほしいと願っている。
では最後に、その谷村と同期である第31期組の人事の動向について見てみたい。
31期組は、2018年夏の将官人事で1選抜の陸将が選抜されたばかりの年次にあたる。
そして2019年11月現在では、以下の幹部たちがその任にあたっている。
竹本竜司(第31期)・陸上幕僚副長(2018年8月)
沖邑佳彦(第31期)・第4師団長(2018年8月)
前田忠男(第31期)・第7師団長(2018年8月)
原田智総(第31期)・陸上総隊司令部幕僚長(2019年4月)
蛭川利幸(第31期)・第6師団長(2019年4月)
※肩書はいずれも2019年11月現在。( )は陸将昇任時期。
以上のようになっており、まずはこの5名が、31期組の陸将に昇任している形だ。
中でも竹本は、第1師団長からいち早く「次の出世ポスト」に異動になり、特に注目を集める結果となった2019年夏の将官人事であった。
ただ、陸自は今、定年延長や陸上総隊の新設の影響もあり、正直人事の新しいルーティンが読み辛い状況にある。
そういった意味では、まだまだ31期組の人事の動向は、定まっていないと言ってよいのではないだろうか。
谷村については、先述のように人事に関する部分で非常に大きな実績を残し続けてきた最高幹部だ。
しかしながら近年の体育学校長の後職を見ると、このポストを最後に退役となる将官が、一部の例外を除きほぼ確実な状況になっている。
そのため谷村も、あるいは2020年3月あたりをめどに、このポストを最後に長かった自衛官生活に別れを告げることになるかも知れない。
しかしながら、いうまでもなく現在体育学校は、2020年に行われる東京オリンピックに向けて、最後の追い込みを掛けている状況にある。
それらアスリートに最大限のパフォーマンスを発揮させるべく、まだまだ谷村に任されている責任は非常に重く、国民からの期待も非常に大きい。
その活躍は要注目であり、これからもますます応援をしていきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:自衛隊体育学校公式Webサイト)
◆谷村博志(陸上自衛隊) 主要経歴
昭和
62年3月 陸上自衛隊入隊(第31期)
平成
10年1月 3等陸佐
13年7月 2等陸佐
18年7月 陸上幕僚監部運用支援課 1等陸佐
18年10月 幹部学校教官
19年3月 幹部学校付
20年3月 陸上幕僚監部人事教育部募集・援護課援護班長
22年3月 対馬警備隊長兼ねて対馬駐屯地司令
24年8月 陸上幕僚監部防衛課・官房副長官補付(安全保障・危機管理担当)
26年8月 第8師団幕僚長
28年3月 宮城地方協力本部長
30年3月 自衛隊体育学校長 陸将補
コメントを残す