その野村が陸上自衛隊に入隊したのは、昭和62年3月。
1等陸佐に昇ったのが平成19年1月だったので、31期組1選抜後期となるスピード出世だ。
その後、1等陸佐として10年を務め、非常に国際色豊かな補職を歴任し将官に昇っている。
(画像提供:防衛省防衛白書2009公式Webサイト)
(画像提供:陸上自衛隊第2師団公式Webサイト)
具体的に、1佐以降で国際関係の任務にあったポストを見てみると、平成24年2月から、20万人以上が死亡したハイチ大地震の救援のため、ハイチ派遣国際救援隊長として現地に赴任。
同年8月までの6ヶ月間を、現地のインフラ復興や生活再建のために陣頭で指揮を執った。
また中央でも、陸上幕僚監部の防衛部防衛課国際防衛協力室長として幅広く、自衛隊ならではの国際貢献活動の在り方について、仕組みづくりに携わる。
平成29年3月には陸将補に昇り、中央即応集団の国際担当副司令官に着任するなど、我が国を代表する「顔」として、常に”軍人外交”の最前線にあった。
またその間、東北方面総監部では訓練課長を、統合幕僚監部では運用2課訓練班長などの要職を歴任。
平成22年8月には「最果ての最強部隊」、風雪磨人の合言葉で知られる遠軽駐屯地の第25普通科連隊長に上番している。
他に、第8師団では幕僚長などの要職も経験しながら、そして平成30年3月、新設された陸上総隊の日米共同部長に、CRF(中央即応集団)の副司令官から横滑りで着任。
日米同盟を基軸とした世界平和への発展のため、全力を尽くし任務に取り組んでいる。
文字通り、我が国を代表する国際派の、陸自最高幹部の一人と言ってよいだろう。
では最後に、その野村と同期である31期組の人事の動向について見ておきたい。
31期組は、2018年夏の将官人事で1選抜の陸将が選抜されたばかりの年次にあたる。
そして2019年9月現在では、以下の幹部たちがその任にあたっている。
竹本竜司(第31期)・陸上幕僚副長(2018年8月)
沖邑佳彦(第31期)・第4師団長(2018年8月)
前田忠男(第31期)・第7師団長(2018年8月)
原田智総(第31期)・陸上総隊司令部幕僚長(2019年4月)
蛭川利幸(第31期)・第6師団長(2019年4月)
※肩書はいずれも2019年9月現在。( )は陸将昇任時期。
以上のようになっており、まずはこの5名が、31期組の陸将に昇任している形だ。
中でも竹本は、第1師団長からいち早く「次の出世ポスト」に異動になり、特に注目を集める結果となった2019年夏の将官人事であった。
ただ、陸自は今、定年延長や陸上総隊の新設の影響もあり、正直人事の新しいルーティンが読み辛い状況にある。
そういった意味では、まだまだ31期組の人事の動向は、定まっていないと言ってよいのではないだろうか。
野村については、先述のように陸自の「凄い幹部」を体現するかのような、非常に充実したキャリアであり実績を誇る幹部だ。
31期組ということもあり、あと1~2のポストで退役というゴールも見え始めてきたが、自衛官人生の総仕上げも、国際関係から離れた補職はまず考えられないのではないだろうか。
その活躍は今後も楽しみであり、どのようなポストで力を発揮してくれるのか、ということも非常に注目されるところだ。
その活躍からは今後も目を離さず、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:防衛省北海道防衛局公式Webサイト)
◆野村悟(陸上自衛隊) 主要経歴
昭和
62年3月 陸上自衛隊入隊(第31期)
平成
10年1月 3等陸佐
14年1月 2等陸佐
19年1月 幹部学校付 1等陸佐
19年8月 東北方面総監部訓練課長
20年8月 統合幕僚監部運用2課訓練班長
22年8月 第25普通科連隊長兼ねて遠軽駐屯地司令
24年2月 ハイチ派遣国際救援隊長(25普連隊長)
25年4月 陸上自衛隊幹部学校主任教官
26年3月 陸上幕僚監部防衛部防衛課国際防衛協力室長
28年3月 第8師団幕僚長
29年3月 中央即応集団副司令官 陸将補
30年3月 陸上総隊司令部日米共同部長
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