岩名が陸上自衛隊に入隊したのは昭和63年3月。
昭和世代最後の、陸上自衛隊入隊である。
その初任地は第73戦車連隊(北恵庭)であり、以降は先述のように、北方を中心に活躍をしてきた。
(画像提供:小島肇・元2等陸佐)
その岩名の活躍の中で、特にご紹介したいのは、やはり機甲科としての活躍・・・と言いたいところだが、ここでは第11旅団副旅団長時代の活躍を取り上げたい。
上記2枚の画像、それに1ページ目に記載させて頂いた、メディアに取り囲まれている岩名の画像だが、これは2017年8月、北海道北恵庭大演習場で行われた日米共同訓練である「ノーザンヴァイパー」の一コマだ。
岩名が第11旅団副旅団長として参加した演習である。
岩名の隣で共同会見に臨むのは、米軍第36海兵航空郡長のジェームス・F・ハープ大佐。
ご覧のように、北海道内での演習にオスプレイが初めて参加したということで様々なメディアが集まったが、やはりそれぞれの思惑で、色を付けた報道が為された。
岩名はこの際、自らがオスプレイに乗り込み米軍と一体になった機動訓練を指揮し、北方初となる大役をやり遂げている。
そのようなこともあるのだろう。
生粋の戦車屋である岩名が東北方面隊に乗り込み、陸将補として任された最初のポストが東北方面総監部の幕僚副長であった理由だ。
2018年現在の安全保障環境は、陸上自衛隊に戦力の集中と機動力の向上を要求している。
その中にあっても、北方や東北方面の戦力をいかに、例えば南方の最前線に送り込むことができるか。
そのロジスティックスと運用の実際は、まさに発展途上で作り上げようとしている最中である。
北方初となるオスプレイの機動訓練を任され、大火力に重火砲をよく知る機甲科出身の岩名が現職に着任したのは、その仕組みづくりに知見を発揮せよという中央の思惑であろう。
そう言った意味でも、岩名のこのポストでの活躍は非常に頼もしく、また楽しみに注目をしたい。
では最後に、その岩名と同期である32期組の動向について見てみたい。
32期組は、2019年8月の将官人事で最初の陸将が選抜される見込みであり、2018年8月現在では、1選抜でも陸将補が出世頭ということになる。
そしてその陸将補にある32期組の幹部は、以下の通りだ。
梶原直樹(第32期)・統合幕僚監部防衛計画部長(2013年8月)
大塚裕治(第32期)・陸上幕僚監部装備計画部長(2013年8月)
森下泰臣(第32期)・陸上幕僚監部防衛部長(2013年8月)
堀井泰蔵(第32期相当)・第5旅団長(2013年8月)
中村裕亮(第32期)・教育訓練研究本部副本部長兼ねて総合企画部長(2014年3月)
田尻祐介(第32期)・第12旅団長(2014年8月)
鬼頭健司(第32期相当)・陸上自衛隊幹部候補生学校長(2014年12月)
木口雄司(第32期)・高射学校長兼ねて下志津駐屯地司令(2015年8月)
腰塚浩貴(第32期)・施設学校長(2015年8月)
青木伸一(第32期)・水陸機動団長兼ねて相浦駐屯地司令(2015年12月)
池田頼昭(第32期)・第10師団副師団長兼守山駐屯地司令(2016年3月)
檀上正樹(第32期)・警務隊長(2017年3月)
小谷琢磨(第32期)・第4施設団長(2017年8月)
斎藤兼一(第32期相当)・第7師団副師団長兼ねて東千歳駐屯地司令(2017年12月)
叶謙二(第32期)・開発実験団長(2018年3月)
佐々木俊哉(第32期)・自衛隊情報保全隊司令(2018年3月)
岩名誠一(第32期)・東北方面総監部幕僚副長(2018年8月)
※肩書はいずれも2018年8月現在。( )内は陸将補昇任時期。
※2018年8月の将官人事で昇任した将補の期別未確認のため、追記する可能性あり。
岩名については、これだけのキャリアを積んで陸将補に昇った幹部である。
東北方面隊の機動展開能力を積み上げる大仕事をこなした後には、さらに重い責任を担うポストが待っているはずだ。
秋山真之が起草し、東郷平八郎・連合艦隊司令長官が訓示した「連合艦隊解散の辞」を、武人の本懐として頂く最高幹部でもある。
その武人に恥じない実直な活躍には今後とも注目し、そして応援していきたい。
※文中、自衛官および関係者各位の敬称略。
(画像提供:陸上自衛隊第11戦車隊公式Webサイト)
◆岩名誠一(陸上自衛隊) 主要経歴
昭和
63年3月 陸上自衛隊入隊(第32期)
63年9月 第73戦車連隊(北海道:北恵庭)
平成
2年3月 第73戦車連隊(北海道:南恵庭)
7年8月 幹部学校指揮幕僚課程(東京都:目黒)
9年8月 富士学校機甲科部(静岡県:富士)
11年8月 第71戦車連隊中隊長(北海道:北千歳)
14年3月 陸上幕僚監部調査部調査課企画班(東京都:市ヶ谷)
16年3月 陸上幕僚監部防衛部研究課研究班(東京都:市ヶ谷)
16年3月 陸上幕僚監部防衛部情報通信・研究課研究班(東京都:市ヶ谷)
19年3月 第5戦車隊長兼ねて鹿追駐屯地司令(北海道:鹿追)
20年8月 幹部学校統合高級課程(東京都:目黒)
21年8月 幹部学校学校教官(東京都:目黒)
21年12月 陸上幕僚監部人事部人事計画課服務室長(東京都:市ヶ谷)
23年12月 自衛隊京都地方協力本部長(京都府)
25年12月 第9師団司令部幕僚長(青森県:青森)
27年8月 統合幕僚監部総務部総務課長(東京都:市ヶ谷)
29年3月 第11旅団副旅団長兼ねて真駒内駐屯地司令(北海道:真駒内)
30年8月 東北方面総監部幕僚副長・陸将補(宮城県:仙台)
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